リスキンとガラドゥが攻撃を仕掛ける直前、ドゥーガが炎を放った。

 

 


しまった!

 

 

だが、そのとき・・・

 

 


ビックフラワーマジック!

 

 

フェルリスの魔法が炎をかき消した。

 

 


たいしたものです。
私の炎をかき消すとは。

 


お褒め眼の言葉、ありがたく受け取ります。

 

 

ドゥーガは心底感心した風にフェルリスを見た。

 

 


あなた方。
仲間を信じるのは良いですが、私も戦っているのです。
私も信じなさい。

 


 


そうだった。
すまなかったな。

 

 

二人の様子に、フェルリスは少し満足げに笑った。

 

 


戦いましょう!
“皆”で!!

 


うむ!

 


ああ。

 


はい!

 

 

そんなやり取りを見ながら、シルビは準備していた。
この銃弾を使う以上はドゥーガ以外“誰にも”かすることすら許されない。
シルビは集中力を高めていた。

 

 


素敵ですね、あなた方は。
そういうのは嫌いではないですよ。

 


余裕だな。

 


まさか。
あなた方のような者達は厄介です。
此方も全力で行きます。

 

 

ドゥーガは杖から今度は黒龍を出した。

 

 


行け、我が黒龍よ!

 

 

そう言うと、その黒龍はガラドゥめがけてやってきた。

 

 


くっ!

 

 

すんでのところで黒龍をよけるガラドゥ。
だが、その黒龍はガラドゥを追尾した。

 

 


ぐあああああ!!!

 

 

追尾してくるとは思わなかったガラドゥは黒龍が直撃してしまった。

 

 


ミランヌ!

 


はい!!

 

 

ミランヌは即座にガラドゥに向かって治癒の詠唱をした。
黒龍はそのままドゥーガの元へ帰っていった。

 

 


さすが獣人、防御は固いですね。
ですが、他の方はどうですかね。

 

 

今度はリスキンに向かって黒龍がやってきた。
リスキンは追尾されようとも、スピードを生かし、黒龍の攻撃をことごとくをかわした。
そして、自らの内にある力を解放した。

 

 


そちらの方は、スピード自慢ですか。
それにその闇の力・・・。
あなた、魔族の血が流れてますね?
黒龍は単体攻撃です。
面倒ですね、これじゃあ。

 


余裕を見せるな。

 

 

リスキンはドゥーガの黒龍を避けながら徐々にドゥーガに近づいていった。
そして、治癒の終わったガラドゥも武装を外してドゥーガに神速で追いついていった。
だが・・・

 

 


スピードだけでは私を倒せません。
武装を外したのは失策でしたね。
闇の力は、確かにこたえますが。

 

 

ドゥーガはリスキンとガラドゥの攻撃を杖を器用に操り跳ね飛ばした。
ただ、リスキンの闇の力は完全には跳ね飛ばせず血を流していた。
わずかではあるが・・・。

 

 


 


妙な期待はよしなさい。
リスキン、あなたの力だけでは、たがが知れている。
あの、シルビという者の力を存分に引き出すために動くのです。

 


!!

 

 

そうだった。
そもそもの目的は、それではなかったか・・・。
信じよう、シルビを。
そのためにドゥーガの隙を作るのだ。
まともな攻撃が通じない今、シルビに全てをかけよう。

 

 

続く

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ようやく、地上にまで登れたマリコ達。

 

 


へ~、これが外ってやつなんだ。
殺風景だね~。

 

 

砂漠のど真ん中である、そう思うのも無理ないが、カイは好奇心で周りをきょろきょろするという事をしない。
さすがに感慨深げではあるが。

 

 


ここは砂漠のど真ん中だもの、殺風景よ。
普通の町に行けばもっと良い風景が見れるわよ。

 


カイ・・・お前もっと感動したらどうだ?
初めてなんだろ?

 

 

カイの事はマリコから登りながら聞いていた。
マリコは言った、自分を奮い立たせてくれた子だ、と。
カイは、もちろん、バカバカしいという風な態度だった。

 

 


んなこと言われたって、知るかよ。
感動できねーよ、これじゃあ。

 


なら、感動できる場所に行けば良い。

 


どこも一緒じゃね。
風景が違うだけで。

 


そんなの、行って見ないと分からないじゃない。
相変わらずね、あんたは。

 


まあ、雑談はそれまでだ。
登ってきたときに俺達が話したこと、今度がお前は喋る番だ。
座っていれば、そこそこ喋れるだろ?

 

 

怪我で座っている状態のリスキンにシルビは冷たく言い放った。

 

 


・・・呪文だよ。
単純だろ?
それなりの魔力は必要だがな。
”入り口”から入るときと出るときの呪文が違う。
それだけ。
でも、それを知っているのはヘルガと俺だけだった。
メイラガ支配していたときも、それ位レベルの秘密事項だったようだがな。

 


じゃあ、それをしてもらう。

 


・・・。
今の俺じゃあ、無理だ。

 


え?

 


ヘルガからの魔力提供がなくなった。
今の俺の魔力はお前らとそう変わらない。

 


じゃあ、どうすればいいの・・・。

 


問題ない。

 


何が問題ないだ、てめえ、殴られてえか・・・?

 


落ち着かれよ、シルビ殿。
リスキン殿、何故問題ないのだ。

 


そこの子供、潜在的な魔力が強い。
詠唱の仕方を教えればいいだけだ。

 


!!??

 


俺のこと?

 


そうだ。

 


まあ、別にいいけど。
でも、混乱しちゃうんじゃね?
あいつらみたいに。

 

 

指差した先にはぞろぞろと出口を這い上がってくる、マリコ達を襲ってきた奴隷達がいた。
奴隷達はマリコ達を見つけ、動転した。
ある者は砂漠のど真ん中だというのに脱兎の如く走り去り、ある者は下に逃げ帰り・・・。

 

 


ちょっとちょっと、私たち、気にしてないわよ!!

 

 

そんなマリコの言葉は、奴隷達には耳に入っておらず、全員がその場から消えた。

 

 


あーあ、行っちゃった。

 


行っちゃったじゃないわよ!
どうしよう・・・。
ここ砂漠のど真ん中だし・・・。
下も迷宮だし・・・。

 


もう行ってしまったのだ。
我達は出来る限りのことをした。
後はあの者立ち次第だ。

 


さんせーい。

 


同じく。

 


・・・。

 


すまない・・・。

 


お前がどうこうじゃないだろ、アレは。
現実、このカイは動かなかった。

 


面倒だったしなー。

 


・・・。
とにかく、ここを開放しましょう・・・。
カイ、お願い・・・。

 


まあ、いいけどね。
俺、この後のこと、しらねえぜ?

 


・・・。
分かってる。

 


お前、どうにかしようとか考えるなよ?

 


私の出来ることなんか、ないわ。
・・・辛いけど、仕方がないことなのよね。
出入り口が開放されたことと、ヘルガを倒したことを伝える、私達に出来ることはそれだけ・・・。

 


・・・お前。

 

 

成長したと思ったが、ここまでとは思っていなかった。
何でもかんでも助ければいいと思っていたマリコが、自分が出来る範囲のことを、と言ったのだ。

 

 


それに元凶を片付けなきゃ意味ないわ。
魔王を倒す。
私達の目的は、それですもの。

 

 

続く

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ヘルガは倒した。
ようやく地下都市は開放される、そう思ったその時・・・

 

 


うう・・・あああ・・・・・・・
おれ・・・は・・・・・・・おれは・・・・・・・・・・

 

 

スニークが起き上がろうとしていた。

 

 


やろう、まだ生きてやがったのか!

 


まって!
何か、様子がおかしいわ!

 


当たり前だ。
ガラドゥのおっさんに壁に叩きつけられたんだ!

 


確かに・・・。
何か、おかしい。

 

 

スニークの様子は、明らかにおかしかった。
痛みでもだえているのではなく、何か別の何かに苦しんでしんでいるような・・・

 

 


うわあああああああああああああああ!!!!!!!

 

 

そのままスニークは気絶してしまった。

 

 


・・・。
この者、どうする?

 


まあ、生きてて幸いだったかな。
してもらわなきゃならねえことあるし。

 


してもらうこと?

 


出入り口のことだ。
入り口から出口に着くまで、大変過ぎる。
ここを開放するってていっても、出るまでにさまよっちまう奴も出てくる。
入り口を開く呪文を、こいつは唱えていた。
それに、いくらなんでもここを作ったメイラの連中だって、入り口から完全に出入りできないのは不便だったはずだ。
何か、仕掛けがあるにきまっている。
それを、こいつに吐いてもらう。

 


なるほど。

 

 

 

*******************

 

 

 

しばらくして、スニークは眼を覚ました。
怪我を負った部分には応急処置が施されていた。
シルビが銃口をスニークに向けた。

 

 


おまえには吐いてもらいたい事が山ほどあるんだ。

 

 

それを、マリコが間に入って制した。

 

 


まって、シルビ!
この人・・・目がぜんぜん違う・・・
雰囲気も・・・

 


・・・。

 


なるほど。
確かに全然違うな。
・・・では、そなたのこと、話してもらう。
どうするかは、その後にしよう。
シルビ殿、銃を下げられよ。

 


・・・まあ、言われて見れば。

 

 

シルビは銃を下げた。
だが、何があってもいいように緊張だけは解かなかった。

 

 


さあ、話して・・・。

 

 

しばらく黙っていたスニークだが、やがて重い口をあけた。

 

 


・・・。
俺の父親は魔族だ。

 


!!!

 


母は魔族に略奪された花嫁だった・・・。
俺は魔族と人間の混血児。
当然のように周囲は俺を蔑視した。
母も、父親似の俺を疎んじた。
そして・・・俺は噂で聞いた地下都市へ逃げ込んだ。
13の頃だった。
だが、そこにあるのは噂とは程遠い・・・地獄だった。

 

 

スニークは話を続けた。

 

 


魔王の出現で、メイラ皇国は混乱し、地下都市は機能してなくなるはずだった。
だが、魔王はヘルガを使ってこの地下都市を利用した。
陰湿なまでの人類の化学の結晶がここにはあったからな。

 

 

嘲笑するように、スニークは言う。

 

 


ここへきてから何年間も、ひそかに腕を磨き続けた。
メイラを憎み、開放されるはずだった地下都市を再び元に戻した魔王を憎み。
そして、俺はヘルガと戦った・・・。
だが、あっさりと返り討ちにあったよ・・・。
そして、そのまま俺は・・・記憶を消され善悪の心を壊されヘルガの駒になった・・・。

 


まあ、アレだけ強けりゃ、ヘルガも側に起きたいだろうからな。
殺すのは勿体無いと思ったわけか。

 


・・・。
俺はヘルガの、いや、魔王の呪いによって体の時間を止められた。

 


そういえばあのおじいさんが言ってたわ。
おじいさんが若かった頃、あなたも若かったって。

 


700年前、魔王は封印された。
地下都市はついに開放されるはずだった・・・。
だが、この地下都市にヘルガは居座り続けた。
いつか蘇るであろう魔王を迎え入れるために。

 

 

スニークは一つ息を吐いた。

 

 


話はここまでだ。
用件はなんだ?
用が済んだら俺を殺せばいい。
かまわない、俺は、それだけのことをしてきた。

 


あなたは操られてきた、被害者よ。

 


俺がしたこと、目の前で見たお前がそれを言うか?

 


私が許せないのは当時のメイラとヘルガよ。
あなたではない。
全ては太古メイラ皇国とヘルガ・・・魔王が仕組んだこと。
あなたはその被害者。

 


加害者だ。
理由なんて、関係ない。

 


・・・マリコ殿、この者を許そうと?

 


・・・。

 

 

シルビもガラドゥも困惑した。
スニークの話に嘘は見あたらない。
今のスニークの眼を見れば一目瞭然だった。
それに、特にガラドゥは嘘をつける相手ではない。

 

 


許してどうなる?
許しを請うことさえ許されない、この罪を・・・。

 


じゃあ、私達と来なさい。

 


なに?

 


戦いなさい。
罪があると思うのなら、それを清算する努力をしなさい。

 


俺に戦え・・・と。

 


そうよ。
あなたには戦う力がある。
それをヘルガは利用した。
なら、戦いなさい。
戦って全てを終わらせる!

 


・・・。

 


スニーク、答えは!?

 


・・・。
罪を購う努力、か。
俺には・・・死んでも購えぬ罪を負っている。
だが、戦う力はある。
だったら、それしか道はなさそうだな・・・。

 


決まりね!
よろしく、スニーク。

 

 

スニークに手を出すマリコ。
スニークは黙ってマリコと握手した。

 

 


1つだけ願いがある。
俺の名はリスキンだ。スニークと言うのはヘルガが付けた名だ。
・・・だからもうスニークと言う名では呼ばないでくれ。

 

 

シルビとガラドゥは黙ってその光景を眺めていた。
今までのマリコとはどこか違う姿を・・・。

 

 

続く

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マリコはヘルガの黒煙が出して消えた場所をじっと眺めていた。

 

 


ヘルガ・・・。

 


また墓でも立てようなんて思ってるんじゃねーだろうな。
ヘルガは、あのアホ眷属とは違う。

 


そうね・・・。
救いきれないような屑だったけど、魔王への忠誠は本物だった。

 


で?

 


作らないわ。
もう、お墓は立っているもの。

 



どこにだよ。

 


この地下都市よ。

 


何故だ?

 


この地下都市はヘルガの忠誠のよりどころ。
だからこそ、ここが、ヘルガの墓標。

 


・・・。

 

 

 

****************

 

 

 

ヘルガが居た場所を眺めていると、マリコはあることに気がついた。
ヘルガの鎌についていた”宝石”だけが転がっている。
他は、服も鎌の本体も煙と化したのに、これだけ・・・。

 

 


あれは、ヘルガの鎌についていた宝石・・・!

 


ほんとだ・・・。

 


なんであれだけ。

 


持って行きましょう。

 


!!

 


馬鹿か、お前!
あの錠前のときもそうだ・・・って、あれもここへ捨ててけ!
それが嫌なら砂漠に放り投げておけ!
持って歩くな、この脳みそ筋肉!

 


なんか意味があるのよ。
あの錠前もこの宝石も。
魔王に繋がる何かが・・・。

 


 

 

シルビは正直驚いた。
ここの人達が、ではなく、魔王に繋がる、とマリコは言った。
前のマリコなら誰かに何かあったら、という思考しかしなかった。

 

 


魔王に繋がる・・・なるほど。
確かにマリコ殿の言う通りだ。
持って行くとしよう。

 

 

続く

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その時、シルビはウエスタの銃弾を撃ち込み、それはヘルガに命中した。
だが、ヘルガは何事もなかったかのように立っていた。
当然である。
ヘルガに当てたのは魔族を”攻撃”するための銃弾ではないのだ。

 

 


ふふふ、無駄なこと。

 

 

ヘルガは愉快そうに笑った。

 

 


悪あがきって、素敵だわ☆
さあ・・・魔王様を侮辱した罪、償ってもらうわ!
“ディフューズアタック”!!!

 

 

だが、魔法は出なかった。
ウエスタの銃弾は効いていたのだ。

 

 


何で魔法が魔力が・・・!?

 

 

驚きを隠せないヘルガ

 

 


いまだ、マリコ!!!

 

 

マリコは剣をかざした。
そして、マリコは膨大な光に覆われ・・・

 

 


ソードシャイニング!!!!!!!!!!!!!!

 

 

圧倒的なまでの光のオーラをだし、その光で一気にヘルガを切り裂いた。
それこそが、マリコの必殺技。
敵単体に光の刃で切り裂く大技。
ただ、光を溜め込むのに”間”が必要だった。
しかも、使うと体力の消耗が著しい。
連発は出来ない。
なので、その決定的なまでの”間”を作り出すために、シルビはウエスタの銃弾を最後の最後までとっておいた。
それこそが、シルビ達の”策”。

 

 


・・・・・・なんですって。

 

 

血を吐くヘルガ。
闇属性のヘルガにとって光属性は天敵。
そして、マリコの属性効果は強力を極める。
その光の刃が直撃したのだ。
ヘルガとて、ただでは済まされない。

 

 


魔王様・・・魔王様・・・・・・!!
負けられない、魔王様の・・・ために・・・も・・・!

 

 

立ち上がろうとしたヘルガ、そこへマリコが一気に間をつめて切り裂いた。

 

 


魔王さ・・・ま・・・愛して・・・おり・・・ます・・・・・・。

 

 

その言葉を最後に、ヘルガは黒煙を出してこの世から消滅した。

 

 

続く

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カイは何事もなかったかのように、いつもと同じ様子で立っていた。

 

 


あらあら、まだいたのねー
ぼうや、怖くて足が動かなかったのかしら♪

 


アホくさくて動くの面倒だっただけだよ。

 


まあ、なんて素直な子かしら♪
自分の立場をきちんと分かってるなんて☆

 


立場あ~?
どうでもいいよ、俺にとっては。
そてにしたって、あんたがヘルガなんだ?
こんなアホ丸出しな奴だったんだな。

 

 

カイは軽蔑の眼差しをヘルガに向けた。

 

 


まあ、口が過ぎると実験体になっちゃうわよ♪

 


で?
そんなことして、何したいの?

 


すべては魔王様のため☆
素晴らしい地下都市へご招待するためなの。

 


じゃあ、魔王様って奴もアホなんだ。

 

 

その言葉に、ヘルガはわなわなと怒りをあらわにした。

 

 


・・・。
魔王様を侮辱することは許さない・・・!!
おゆきなさい、ヘルダスト!

 

 

ヘルダストがカイに襲い掛かる。
その時。

 

 


危ない!!!

 

 

マリコがカイを襲おうとしたヘルダストたちを一掃した。

 

 


あら、まだまだ元気じゃない、おちびちゃん♪

 


・・・。
大丈夫、カイ?

 


おかげさまで。

 

 

肩をすくめて言うカイ。
殺されかけたというのに、その態度はまったく変わらなかった。

 

 


巻き込んじゃったわね・・・。

 


アホくさっ。
巻き込まれたつもりなんかねーよ。

 


・・・相変わらずね、あんた。

 

 

マリコはあきれ返った。
カイは、こんな状況でも、カイのままだった。

 

 


ところで、アレがあんたが倒したがってたヘルガでいいんだよな?

 


そうよ。
そして、倒す。

 


そりゃ、ご苦労さん。
あんなアホだと相手にするの疲れるだろうにさ。

 


そうね、アホを相手にすると疲れるわ。

 


まあ、そんなアホを相手にしているあんたも十分アホだけど。

 


アホで悪かったわね。

 

 

そう言いながらマリコは微笑んだ。
こんな状況下でもカイはまったく変わらない、それが嬉しくてしょうがなかった。

 

 



なんか気色悪いんだけど。

 

 

そんなやり取りをヘルガはじっと眺め、そして口を開いた。

 

 


・・・。
ぼうや・・・許さないわよ。
私どころか・・・魔王様を侮辱した罪・・・
償ってもらうわ!!!

 

 

カイを殺そうとヘルダストたちに襲わせるヘルガ。
それをことごとく、マリコ・・・いやマリコ達に消されていった。

 

 


あんた、散々魔王様魔王様言ってたけど・・・。
ホント、魔王様命なんだな。
感心するぜ。

 


まったくだ・・・。
そこまで取り乱すとはな。

 


ヘルガがアホなんだから魔王様は相当なアホって・・・。
カイ、うまいこと言うじゃない。

 

 

ヘルガはさらにわなわなと震えた。

 

 


許さない、許さないわーーーーーー!!!

 

 

ヘルガは激高して、強力な闇魔法を放った。

 

 


!!!!

 

 

マリコ達全員が横っ飛びになって、ヘルガの魔法攻撃を避けた。
カイはガラドゥが担いでいる。
今のヘルガは怒りで我を忘れているので詠唱に無駄ができていた。
それに、全員ある程度ヘルガから距離が離れていたので避ける事が出来た。

 

 


へえ~、あれが魔法ってやつなんだ。

 

 

カイはガラドゥに担がれたまま、まったく動じずそんなことを言った。

 

 


・・・たいしたガキだぜ。

 


・・・。

 


どーも。

 

 

そんなカイを見て、シルビはあることを思いついた。

 

 


ヘルガの今の狙いはそのガキだ。
ガラドゥ、そのガキかついでヘルガの攻撃を逃げ回ってほしい。

 


それはもちろんだが・・・?

 

 

ガラドゥはそもそもカイを放っておくつもりはない。
シルビならそれは分かるはず。

 

 


見ろよ、ヘルガは魔王様の愛で我を忘れてあんなに震えている。
バリアも張っていない。
ヘルガの目的は、魔王をアホって言ったカイだ。
・・・おいガキ、お前には悪いが囮になってもらう。
お前の身の保障はガラドゥのおっさんがしてくれる。

 


・・・?
どういうこと。

 


今がチャンスだ・・・
この意味、分かるな?

 


!!

 


 


悪いな。
地下都市の人間である以上、ヘルガの事は、お前も無関係じゃない。
しっかり働いてもらう。

 


ちょ、ちょっと、カイをおとりなんて!

 

 

その言葉をシルビは眼で制した。

 

 


静かにしろ、マリコ。
お前は黙って準備してるんだ。
・・・ガラドゥ。

 


わかった。
マリコ殿、我を信用しろ。

 

 

マリコは黙ってうなずいた。
それをを皮切りにガラドゥはカイを担いで離れていった。
カイがヘルガの眼に留まるように、そしてある程度はなれた場所に。
マリコはなにやら集中しだした。
・・・そしてシルビは、ウエスタから託された弾を銃に込めた。

 

 


逃がさないわよ!!

 

 

ヘルガはガラドゥ・・・カイに向かって魔法を無駄に連発し始めた。
ガラドゥはカイを担いでいるとはいえ、さっきの奴隷達との戦いで武器を全部はずしたままで身軽だ。
我を忘れたヘルガの攻撃を悉くガラドゥはかわした
それに苛立ちを覚えてさらに広範囲な魔法を浴びせようとヘルガは大きく魔力を体に溜めこもようとした。
そのときだった・・・

 

ヘルガに銃弾が飛んできた。

 

 

続く

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ヘルガは、シルビを見てくすくす笑っていた。
シルビは怒りを抑えるのに必死になっていた。

 

 


お次はこんなのはどうかしら♪

 

 

そうヘルガが言うと、ヘルダストたちが大勢の奴隷たちを連れて闇から現れた。

 

 


さあ、皆さん、あのおちびちゃん達を倒せばここから解放してあげるわ♪

 

 

その言葉に歓声を上げ、奴隷たちは各々が手に武器を持ちながらマリコ達に襲ってきた。

 

 


!!!

 


このやろう・・・!

 


あいかわらず、悪趣味な真似を。

 


皆の苦しみを利用するなんて・・・!!

 

 

マリコは剣の柄を、ガラドゥは武装を全部はずし、シルビは愛用の銃を振り、各々、奴隷達が死なないように戦った。
そんな様子をヘルガは面白おかしく見ていた。

 

 


変なところで大変ね、上等品は☆
自分たちを殺しに来ているんだもの。
殺しちゃえばいいのに♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ようやくマリコ達は全員の奴隷たちを気絶させる事が出来た、その時・・・

 

 


ばっかみてー

 

 

一人の少年が他人事のように此方を眺めていた。

 

 

カイだった。

 

 

続く

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ガラドゥとマリコが怒涛のどとうのようにヘルガに攻撃を仕掛けた。
二人のコンビネーションは既にかなりの域に達していた。
この地下都市に来るまでの間共に戦ってきたこともあるが、二人の天才的戦闘センスが大きい。
ガラドゥはマリコが直線的にならなくなったことにも、すぐに対応した。
しかし、ヘルガはそれのこと如くを楽しみながら防いでいた。

 

一方、シルビは銃を構えていた。
ヘルガはシルビの銃のこともあって常にバリアを張っている状態にあった。
そうでなくても、ヘルガは瞬時にバリアを張る事が出来る。

 

それに、”策”のこともある。
決定的なタイミングがこなければ迂闊にウエスタの銃弾は使えないとシルビは考えていた。
なので、今は辛抱のときだった。
そのようなことを考えながら、二人が攻撃している間を針の糸を通すが如くヘルガに向かってシルビは銃弾を飛ばしていった。

 

そして、ヘルガにシルビが放った弾丸が到達するその直前・・・
闇から出てきた何かで、ヘルガはシルビの弾を防いだ。

 

 


!!!!

 


あらあら、折角のお友達を手にかけるなんてアナタも残酷ねぇ♪

 


ウエスタ!!!!!

 

 

闇からヘルガが出したのは、ウエスタだった。
ウエスタは、シルビの銃弾を浴びて吐血した。
ヘルガは愉快そうにシルビの前にウエスタを放り投げた。
あまりのことに愕然とする三人。
最も動揺したのは、当然シルビだった。

 

 


おいおい、なんて顔してんだ、シルビ・・・。

 


喋るな、今止血する!!

 


・・・止血かあ、そうかあ。

 

 

満面の笑顔のウエスタ。
その表情は喜びに満ち溢れている。

 

ウエスタの胸からは大量の血があふれ出していた。
シルビは自分の服を破り、必死でウエスタの血を止めようと強く巻きつける。
しかし、ウエスタの傷は、明らかに致命傷だった。
それでも、シルビは必死でウエスタを助けようとした。

 

そんなシルビの様子に、笑顔でウエスタは言った。

 

 


・・・。
いやあ・・・、こんなまともに看取られ・・・て・・・死ぬなんて・・・
想像した・・・こ・・とな・・・・・・

 

 

それがウエスタのこの世での最後の言葉になった。
死に顔は穏やかな笑顔で満ちあふれている。

 

 


ウエスタ?
ウエスタあああああああああ!!!!!!!!!

 


あらら、死んじゃった♪

 


・・・。

 

 

まともに看取られるて死ぬとは思ったことなかったと笑顔で死んだウエスタ。
どこがまともなのだというのか。
どう考えてもまともじゃない。
それなのに、まともな死に方だとウエスタは言った。
ウエスタにとって、自分の死に苦しむシルビは、悲しみでもあり喜びでもあった。
それはあまりにも悲劇だった。

 

 


ウエスタは私の一番お気に入りの奴隷だったのよー
だ・か・ら、と~っても素敵な死に方をさせてあげないといけないって思ったの♪

 


何が素敵だ・・・。

 


だって素敵でしょ♪
ウエスタだって喜んでたじゃない☆
ちょっとつまんないけど。

 


ヘルガ、貴様あああああああああ!!!!!

 

 

そのままヘルガに突っ込んでいこうとするシルビをガラドゥが羽交い絞めにした。

 

 


シルビ殿、駄目だ!!

 


・・・。

 

 

マリコはシルビがあれほどまでに取り乱すのを初めて見た。
ずっと一緒で、いつも守ってくれていた、兄とよんでもおかしくない存在。
いや、兄なのだ。
その兄は、常に冷静で目の前にどんな残酷な光景が広がっていようが、なんだかんだ言いながらも取り乱すことなどなかった。
だが、今は違う。
目の前で友人が凄惨な死を遂げた。
・・・凄惨な言葉を残して。

 

 


離せ、ガラドゥ!!!!!

 


シルビ殿!!
それこそヘルガの思う壺だ!!!
ウエスタ殿を死を無駄死ににしたいのか!!!!

 


!!!

 

 

ガラドゥの言葉に、はっと我に返るシルビ。
ウエスタは自分がどうなるかをわかっていて、シルビに地図と銃弾を渡したのだ。
シルビが、今我を忘れてヘルガにやられでもしたら、ウエスタの死はなんだったのか。
そもそもウエスタは、自分を心配する奴も心配する相手もいないと言っていた。
ここへ来る前から、すでにウエスタには救いなどなかった。
だからこそ、ウエスタにとって、まともでないはずの死はシルビの悲しみによってまともな死になったのだ。

 

 

 

 

 

 


ウエスタ・・・。

 

 

続く

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ガラドゥはそのままスニークを壁に叩きつけた。
スニークは獣人のパワーで壁に叩きつけられて、血まみれになってピクリとも動かなくなった。

 

シルビはスニークの焦りを利用した。
どちらかに止めをさすチャンスが少しでも見つければ、必ず仕掛けてくる。
しかし、それは逆を返すともう一方の相手に隙を作ることになる。
スニークの速さは尋常じゃない。
もし、ガラドゥがもう一瞬でも遅い反応であったらシルビの命はなかっただろう。

 

 


あらあら、スニークったら♪
お相手が強いと役に立たないわね~。
素敵☆

 


・・・次はお前の番だ。

 

 

シルビは言い放ち銃を構え、ガラドゥもすぐに臨戦態勢をとった。
だが、スニークとの戦闘でのダメージを隠しきれない。
そして、マリコはヘルガに追い詰められていた。
ヘルガは、最初こそ驚きで後手に回ったが、マリコの今までと違う戦方法にもすぐに慣れてしまった。
マリコはへルガのバリアを張るタイミングこそ掴んだものの実力差は歴然だった。
光の勇者とまで言われ、圧倒的な戦闘力でどんなに強い魔物たちも一瞬で一掃してしまうマリコは、今や鮮血で体が覆われ鉄壁の精神力で立っているに過ぎなかった。
ヘルガは強すぎる、圧倒的に。

 

 


なんて可愛い子達・・・素敵・・・♪

 

 

ヘルガは心底愛おしそうにマリコ達を見つめる。

 

 


あなた達は魔王様への献上品。
こんなに上等品が揃って・・・魔王様はお喜びになるわ♪
おちびちゃんは魔王様の前で壊すとして・・・お兄さんとワンちゃんは・・・素敵な実験材料になるわねー
上等品をもって、最上等品を壊すの☆
それこそが、魔王様への最高のプレゼント♪
光の勇者を魔王様の御前で壊すとか、素晴らしいわ~

 


ヘルガ!!
あなたが何を企んでいるかは知らないし、知りたくもない!!
でも、あなたをここで倒す!

 


この状況で、どうやって私を倒すのかしら♪
可愛いおちびちゃん☆
それに、安心して。
さっきも言ったでしょう?
あなた達は大事な大事な魔王様への献上品。
命まではとらないわ~
まあ、今はだけど♪

 


ベルデア達にしたことを我達にもしようというわけか・・・。

 


うーん、それは迷い中。
あなた達はあの女の子やBNK3Rとは違うもの。
ああいう単純な壊し方は難しいわよね☆
何よりも魔王様が満足しないわ♪

 


お前が何したいんだか、さっぱりだよ。
でもな、人間をなめすぎてるぜ。

 

 

シルビはウエスタのことを想う。
自分はウエスタがたどってきた人生を何も知らない。
知っているのは濃い影を持って生きてきたことだけだった。
ウエスタの最後はどうだったんだろうか。
あいつは、どんな思いでここにいたのだろう。
ただ、ウエスタは・・・どんな境遇でも最後の最後まで壊れなかった。
ヘルガはその意味を、理解していない。

 

 


面白いことを言うのね、お兄さん♪
でも、仕方がないでしょう?
魔族より下の存在なんだもの、人間は☆

 


それがなめてるって言うんだよ・・・。
俺たちは・・・人間は・・・お前たちが思っているほど単純じゃねえ。

 


そうかしら?
私、ここで何百年も人間を見続けてきたのよ☆
分かるわ~。
人間は単純な生き物、品性も誇りもない。
醜く愛おしい、可愛い存在♪

 


・・・勘違いも甚だしい。
ベルデアもランヴィも・・・品性も誇りもあった。

 


何故?
あの子達のどこにそれを見出したのかしら♪

 


分からぬなら、分からぬでよい。
そのようなこと、きさまに期待してはおらん。

 

 

ヘルガは、そんなシルビとガラドゥの言葉を心底面白そうに嘲笑った。
そんなヘルガにマリコは仁王立ちし、剣をヘルガに向けた。

 

 


・・・ヘルガ。
私達人間の力、見せてあげるわ。
あなたが否定した、人の心の強さを知らしめてあげる!!

 


さすがおちびちゃん♪
特別製は言うこと違うわ~

 


私は特別なんかじゃない。
ただの人間どころか、それ以下の弱い存在・・・。
でも、それでも、譲れないものがある!

 


弱い、あなたが?
心も戦闘力も一級品よ。
無自覚って怖いわね♪
さすが光の勇者様、謙虚で素敵☆

 


人間をなめるなって、言ったはずよ。
私は私だけの力で立ち上がったんじゃない!
私には私の祈りを思い出させてくれた人達がいた!!

 

 

老人の問いかけは、マリコに考える力を与えた。
カイの言葉は痛烈なまでにマリコに己が生きなければならない意味を思い出させた。
彼らは勇者としてではなく、人間としてのあり方をマリコに突きつけた。

 

 


ヘルガ。
あなたはここで倒れるの。
人間は・・・あなたのおもちゃじゃない。
あなたを許すわけにはいかない!!!

 

 

その言葉には絶対的な決意があった。
その目には強い光を宿していた。
どんなに追い詰められていても、マリコは、ヘルガを倒すことだけを考えている。

 

 


マリコ!

 


マリコ殿!!

 

 

マリコの言葉に、シルビとガラドゥは奮起した。
心のどこかで、ヘルガには敵わないと思っていた。
ヘルガは自分達に何をしようというのか、そればかりを想像していた。
しかしマリコの言葉は、ヘルガを絶対に倒す、その心を二人に強く思い起こさせた。

 

 

続く

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