マリコが人々に言葉をかけた後、ダルメラは言った。

 

 


見事だったぞ、光の勇者よ。
皆の顔には希望が満ち溢れておる。
勇敢に戦おうと口々言っておる。

 

 

マリコの言葉にその場にいた全員が心を一つにした。
混乱を背負い、疲弊しきったメイラの兵も民も・・・希望を抱いた。
眼を輝かせた・・・希望で・・・。
ダルメラは思った。
マリコこそがこの世界を纏め上げる存在なのだと。

 

マリコはそんなダルメラに口を開いた。

 

 


私達はそろそろ行かねばなりません。

 


どこにだ。

 


魔王を倒しに、です。

 


封印されている場所はわかっておるのか。

 


あ・・・!

 


相変わらず特攻だな・・・お前。
調べてから行くもんだろう。
少しは成長したと思ったけど、脳みそ筋肉は変わってねえか。

 

 

そう言うとシルビは爆笑した。
他も笑いをかみ殺している。

 

 


じゃあ、どうやって調べればいいのよ!

 


わざわざ調べなくとも、知っている者がここにはおるだろう。
アッシャ殿、封印されている場所かどこだか教えてくれぬか。

 

 

アッシャに声をかけるガラドゥ。
だが当のアッシャはおどけた風に答えた。

 

 


どこっだったかしら~♪

 

 

知らないはずがない。
だが、答えてくれる気配などない。

 

 


・・・。
では、エルダ殿。
何か知らないか?

 


・・・申し訳ありません。
我がエルフ達も全てを焼き払ってしまったようで・・・当時の様子はあまり分からないのです。

 

 

エルダは内心、悲しかった。
エルフの寿命は長い。
祖父ならば、何かしら知っていたはずだった。
なのに、何も残さず逝ってしまった。
高貴なるエルフの長だった祖父が・・・。

 

ダルメラはそんなやり取りに笑みをこぼした。

 

 


調べならとおに済んでおる。

 


え!?

 

 

それには、マリコだけでなく、アッシャ以外、その場にいた全員が驚いた。

 

 


知っているのだったら、すぐに仰って下さればよいではないですか!

 


言ったら、休息も取らずにそなたらは行動に出てしまうであろう。
それはどうかと思ったのだ。
休息は必要だ。
だからだ。

 


・・・。

 


マリコはすることなすこと全て特攻ですからね。

 


・・・何よそれ。

 

 

笑いながらシルビは言い、マリコはそれに対して年齢相応のむくれた表情を見せた。
その様子に、ダルメラは複雑な気持ちを抱いた。
マリコとシルビが恋仲ではないことは、ようやく分かってはいた。
しかし、シルビがマリコが最も心を許している相手であることは確かなのだ。

 

 


魔王が封印してあるのは隣国リゾッテの首都から少し離れた樹海に位置する。
そこには妖精が住む、妖精の森と呼ばれておるところが樹海の奥深くにあると当時の資料で見つけた。
何で、そんなところに封印したのかはわからぬがな。

 


妖精の森・・・。
しかし、妖精もまた我らがエルフと同様、外の者達を受け付けませぬ。
樹海の奥深くにある自らの土地に入れてもらえるでしょうか。

 


そなたらに希望を見出したのなら、入れるはずだ。
余が、そなたらに希望を見出し全てを話したようにな。

 

 

その言葉に対しアッシャは満面の笑顔をこぼした。

 

 


私が合格を出したんだもの、平気よ~。

 

 

 

***************

 

 

 

二日後の朝、準備が済んだマリコ達はメイラから出発することになった。
妖精の住む樹海のすぐ横のリゾッテの首都まではアッシャ達が乗ってきた、The Circusで連れて行ってもらうことになった。

 

別れ際、ダルメラはマリコに声をかけた。

 

 


マリコ・・・。
全てが終わったら・・・再びこの地にもう一度足を運んでくれまいか?
そなたに・・・言いたい事があるのだ・・・。

 



それならば、今仰れば良いではないですか?

 

 

マリコらしい受け答えに苦笑しながらもダルメラは言った。

 

 


今では意味はないのだ。
それに、そんな個人的なこと、今はどうでもいい。

 


 


光の勇者よ・・・全てを終わらせるだけでは駄目だ・・・。
必ず生き残るのだ。
多くの犠牲の上での平和など、所詮砂の楼閣だ。
勇者であるならば、光り輝く存在ならば、犠牲になってはならない。
全て終わらせ・・・生きて戻る・・・。
それこそが、大魔王が倒れた後も、人々に希望をもたらす事になるのだ。

 


希望・・・。

 


そうだ、希望だ。
大魔王倒れし後そなたが生きて帰ってくる、それには意味がある。
忘れないで欲しい、それこそが希望をもたらすのだと。

 

 

ダルメラは、必ずマリコが・・・いや、マリコ達が大魔王を倒すと信じている。
そして、その後のことも考えているのだ。
本当の意味で希望をもたらすのは彼なのではないか、マリコはそう感じた。

 

 


わかりました。
必ずや生きて帰ります。

 

 

力強い言葉を返すマリコ。
そんなマリコを見てダルメラは誓った。
マリコに相応しい男になろうと。
皇王としてではなく、人として。

 

 

 

 

 

そんな光景を見ながら、ララとリビルは複雑な感情を持った。
結局最後まで、マリコは気がつかなかった。

 

 


マリコ様・・・受け入れてくださるかしら。

 


そうですね・・・。
でも、我々が根性で受け入れて頂くよう計らうのです!

 


そう・・・その通りでえすわ!
頑張りましょう、ダルメラ様の幸せのために!!

 

 

二人はダルメラの幸福の為にダルメラとマリコを結ばせることを誓った。

 

 

 

***************

 

 

 

The Circusの中で揺られながら一同はリゾッテの首都を目指した。
The Circusの中は列車の中とは思えない、豪華な作りになっていた。

 

 


今すぐにでも封印を食い破ろうとしている大魔王・・・。
封印しなおそうなんて、みんな考えてないわよね?

 


まさか。

 


倒さなければ、無意味だ。

 


また悲劇を繰り返してはなりません。

 


“百世を案じろ”という、とある偉人の言葉がある。
再び封印が出来たとしても・・・後世に遺恨を残すことになろう。

 

 

一同は決意した。
大魔王を封印するのではなく、必ず倒すことを。

 

 


まあまあ、真面目な話はおいておくとして、到着するまでパーッと楽しみましょう♪

 


さんせーい!

 


お、それはいいな。
何するか?
俺の秘儀でも見るか?

 


それ、興味ある!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


結局、マリコのやつ・・・皇王様の気持ちに最後まで気がつかなかったな。
まあ、全部終わったら、マリコに告白するって言ってるんだ。
その時が勝負かな・・・。

 

 

シルビは天を仰いだ。
そして誓った。
マリコの幸せの為にどんなことをしてもダルメラとくっつけなくてはならない、と。

 

 

続く

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執務室に来たマリコに、ダルメラは意を決して話しかけた。

 

 


光の勇者よ。
民に勇気と希望を与えるために、皆々に言葉を与えてはくれぬか。

 


言葉・・・?

 


民には、そなたの直の言葉が必要だ。
勇士を示してほしい。
光の勇者として。

 

 

ダルメラには、それがマリコの負担になるとはわかってはいた。
しかし、皇王としての責務は果たさねばならない。
自らの肩にはメイラ国民の行く末がかかっている。
世界を救う、すなわちそれはメイラを救うことと同じことなのだというのがダルメラの想いだった。
メイラだけを救おうなどという考えは、ダルメラにはない。

 

光の勇者に世界中の人々が希望を抱く今、マリコ・・・光の勇者の言葉には絶大な効果がある。
マリコの、その圧倒的なまでの意志の強さと眼差しを持ってすれば、その言葉に心を動かされぬ者はいない。

 

 


わかりました。
必ずや、皆に戦う勇気を与えましょう。

 


頼もしい言葉、ありがたく思う。

 


当然のことです。

 

 

マリコは硬く目を瞑った。
そして、足元がすくむのがわかった。
自分がすることの意味に・・・。
だが、逃げることは許されない。
己が決めた道なのだ。

 

希望を与える、それが勇者の証だとガラドゥは言った。
自分が本当に勇者ならば、それができるはずだ。
アッシャは合格だと言った。
だが、それでも自信など正直ない。
それがマリコの本音だった。
だけど・・・。

 

 

 

****************

 

 

 

その頃、メイラの首都ではダルメラの呼びかけに応じて集まった猛者たちや国民が広間に押しかけて来ていた。
マリコの言葉を聞くために・・・。

 

 


どんな女性かしら。

 


女、じゃなくて、女の子だって話だ。

 


そんな!
大丈夫かしら・・・

 


他でもないダルメラ皇王様が認めたお方だ、間違えがあるはずがない。

 

 

女性はその言葉に安堵した。
そうだ、ダルメラが認めたのだ。
あの皇王が間違えをおかすはずがない。

 

 


そうね!
確かにそうだわ!!

 

 

その言葉に水を差すように、とある猛者が口を挟んだ。

 

 


本当にそうなのか~
地下都市なんか作った国の皇王じゃねえか。

 


ダルメラ皇王様が作ったんじゃない!
皇王様を馬鹿にするな!

 


そうよ!
隠さず全部教えてくださったわ、皇王様は!
こんな事を隠さないなんて、さすがダルメラ皇王様だと思ったのよ、私は!

 


ふ~ん。
でも、ガキなんだろ?
しかも女。

 

 

それを近くで聞いた傭兵らしき男が口を開いた。

 

 


俺さあ、エルダスで見たことあるぜ、光の勇者ってガキを。

 

 

傭兵の近くにいた全員が振り向く。

 

 


俺は魔族専用の傭兵をしてるんだけどさ、エルダスの兵と一緒に討伐に行った時に見たよ。
ガキだったけど、怖い女だぜ、ありゃあ。
どんな強い魔物がいても突進して攻めていく。
しかも、強すぎだ、ありゃあ。
ほんと、一瞬で蹴散らしやがる。
勇者だの何だの騒がれるのも無理もないって思った。
見た目で判断すると痛い目見るぜ。

 

その言葉に、傭兵の言葉を聞いた全員が息を呑んだ。

 

 

 

*******************

 

 

 


そう、浮き足立つなって、俺達がついているってな。
何のために俺達が横にいるように言われてるんだ。

 


浮き足立ってなんかないわよ・・・。

 


嘘は疲れるぞ。

 

 

にやりとシルビが笑った。

 

 


なにそれ・・・。

 


シルビ殿の言うとおりだ。
我々がついておる。

 


マリコなら大丈夫だ。

 


そうですわ。
私も、及ばずながら、側にいますとも。

 

 

マリコは心が軽くなるのを感じた。
そうだ、自分は一人じゃない。

 

 

 

*******************

 

 

 

案内された場所には首都を任されているメイラの兵士たちが集まっていた。
メイラ兵士の後ろには、大勢の人々が押し寄せていた。
光の勇者からの直の言葉を聞くために。

 

マリコは一つ上の段に立たされた。
その横には、マリコと共に戦ってきた仲間としてシルビ達が立っている。

 

マリコの姿を見て、人々は驚いた。
少女だとは聞いていたが、あまりにも小柄だった。
とてもじゃないが一瞬で魔族たちを蹴散らすとは思えない。
だが・・・威風堂々と立っている、そのような少女が。
人を圧倒する何かを持っていた。

 

マリコは覚悟した。
言わねばならない、自分の想いを、祈りを。
そして、語り始めた。
その眼には強い光が宿っていた。
覚悟の光だった・・・。

 

 


皆々方。
魔王は強大です。
その証拠に、完全には封印は解かれていないのに魔物も魔族もその力は強まる一方です。
世界中がその力で圧倒されつつあり、混乱は増すばかりです。

 

 

人々は息を呑んでマリコの言葉に耳を傾けていた。

 

 


しかし、絶望する必要はありません。
立ち向かう者がいる限り魔王は倒される運命にあるからです。
その証拠に、人々の心が絶望に支されていた700年前、どんな状況下にあろうとも絶望しなかった当時の勇者たちは魔王の封印することに成功したのです。

 

 

その場にいた者達は、マリコの其の眼の輝きに、言葉の意味に、心を奪われた。
そうだ、成功したではないか。
700年前、当時の勇者たちは魔王を封印することに。

 

 


絶望しなければ立ち向かえる相手なのです。
当時の世界が滅びたのは、絶望した者があまりにも多かったからです。
それゆえに魔王を倒す前に世界を壊してしまったのです。
絶望するばかりだった為に。

 

 

マリコは強く語った。
自らの願いを。

 

 


多くの人々が希望を胸に立ち向かえば、滅びは訪れません。
証拠はもう、すでに用意されているのです。
戦いましょう、皆で。
そして、荒廃を食い止めましょう。
諦めてはなりません、何が降りかかろうとも。
皆で魔王を倒すのです。
皆、力を合わせましょう!

 

 

最後の言葉が終わった瞬間、その場に歓声が沸き起こった。
口々に言った。
そうだ戦おう、光の勇者様と共に・・・と。

 

皆の目には強い希望の光が宿っていた。
特にメイラの人々の眼は、マリコが言葉を投げる前とは明らかに違っていた。
皆、どこか虚ろだった。
無理もない、今のメイラは魔族以外にも地下都市の件で相当な混乱を背負っている。
だが、今は違っていた。
マリコが驚くほど、その表情には希望に満ち溢れていた。

 

届いた・・・自分の言葉が・・・。
そして、皆の希望に満ちた表情を見て思った。
己は勇者なのだと。

 

マリコの、言葉を発する前と後との、眼の輝きの違いにシルビはにっと笑った。

 

 


やりゃあ出来るじゃねえか、マリコ。

 


うむ。

 


マリコだからな。

 


すばらしいですわ。

 

 

そんな中、エルダは呟いた。
微笑みながら。

 

 


勇者の誕生・・・ですね。

 

 

続く

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執務室で書類を眺めながらダルメラは呟いた。

 

 


これ以上先延ばしは出来んな・・・

 


何がですか?

 


最初から決めておったのだ、本当は。
マリコ・・・光の勇者に、民に言葉を与えほしい、と。
だが、実際は何日もだらだらと引き延ばしてしまった。
個人的感情で、な。

 


それはマリコ様を思いやってでしょうか・・・。

 

 

ダルメラは苦笑した。

 

 


余はマリコを愛しておる。

 


!!

 

 

ダルメラがその事をララとリビルにはっきり口にしたのはこれが初めてだった。
そのことに驚くララとリビル。

 

 


でもな、余はメイラ皇国の皇王なのだ。
責務は果たさねばならぬ。
光の勇者が大勢の民の前で言葉を投げれば、民に希望と勇気を与えるだろう。
それは、世界の破滅を止める手段として絶大な効果を呼ぶ。

 

 

ララは複雑な気持ちを抱いた。
愛する者に重責を背負わせる。
その心痛たるや如何ほどか。

 

 


確かに仰るとおりです・・・。
私も思っていたことなのに、正直、すっかり忘れてしまってました。
そのことを・・・。

 

 

ダルメラの心を思うばかりで、そのことを忘れていた自分にリビルは苦笑した。
皇王の前に人であってほしいと祈ってしまったのだ。
今までのダルメラは、常に人である前に皇王であったから・・・。

 

それは、皇太子の頃からそうだった。
人である前に皇太子だった。
幼いはずなのに、すでに風格が漂っていた。
ダルメラの子供時代は、あまりにも皇太子が過ぎた。
リビルは末端の官吏ながら、その姿に心を痛めていた。
まだ子供なのに・・・と。

 

 


世界各地から、すでに余の呼びかけに応じた志を同じくする各地の猛者が次々と集まって来ておる。
そして、何よりもアッシャのお墨付きだ。

 

 

そう、“あの”アッシャが認めたのだ。
それが意味することを、ダルメラは知っていた。

 

 


さて、リビル。
光の勇者を呼んできてはもらえぬか。

 


・・・はい。

 

 

ダルメラはマリコではなく光の勇者を呼べと命じた。
そのことに悲しく思いながらリビルは執務室を出て行った。

 

 

続く

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アッシャとマリコ達の戦闘は圧倒的にマリコ達の方が不利であった。

 

 


あなた達の力はその程度なの!?
そんなのじゃここから生きて出さないわよ!

 


くそっ・・・・
今までの炎とは段違い過ぎる・・!

 


当たり前だろおっさん!
相手は幾多もの魔族どころか、魔王相手にした賢者様なんだぜ。
そう容易く攻撃が当たってくれる相手じゃねーっての。

 

 

そう言いつつ、シルビは内心喜んでいた。
最初は何も考えずにただひたすら前に突っ込ぬしか知らなかったマリコが、仲間との絆で今まで以上に格段に強くなっていた。
仲間と共に戦うということの意味を知ったのだ。
ずっと一緒に居る存在だけに、その成長を自分の様に嬉しく思っていた。

 

 


誰の遣いかは知らんが、この戦いには勝たせてもらう!

 

 

リスキンは未だ自責の念は拭えない。
だが、それでも、今のリスキンの心は、今までにない大きな心の余裕が出来ていた。
スニークとして生かされ行った数々の悪行、その末の死を覚悟をしたが、光の存在はそんな自分を許した。
またスニークであった事実を伝えてもなお“自分”としての生き方の道しるべを教えてくれた皇王と言う存在。
少しだけ、少しだけ前を見つめれるようになった自分が再び後ろを向かないよう、この全ての戦いに決着を付けなければならない。

 

 


いいわね、皆いい眼をしているわ!
そうこなくっちゃ!

 


ちょっとは手加減しなさいよ!
アンタが作った空間でアンタがボスだなんて理不尽よ!

 

 

マリコは無駄口を叩いていてもその動きに一切の乱れはなかった。

 

 


そんな世迷言、魔王相手にしても言うつもりかしら!?

 

 

アッシャは赤黒く燃え盛る火柱をマリコに叩きつけるが、マリコは瞬時に避ける。

 

 


ですがこの炎の魔法、同じ炎を持つ者として尊敬の意を表します・・!

 


あら、嬉しい一言だわね♪
じゃぁ、眼に焼き付けなさい!

 

 

アッシャが指を鳴らすと無数の火球がミランヌへ降り注ぐ。

 

 


頭上からの攻撃など、我々には効かん!

 

 

ガラドゥは斧を横一文字に振り、火球を全てなぎ払う。

 

 


やるじゃない、ならこれはどうかしら!

 


!?

 

 

突如目の前に迫ってきたアッシャに防御することしか出来ず、シルビは炎の壁ギリギリの所まで蹴り飛ばされる。

 

 


うぉわ!!熱!!
この壁マジで燃えてんのかよ!?

 


誰かさんみたいに人を食べる趣味は無いけど、一度こんがり焼けてみるのも良いかもよ!

 


もらったわ!!
ソードシャイニング!!!!!

 

 

アッシャの背後をとったマリコはソードシャイニングを振り下ろす。
だが、突如地面から飛び出した幾重もの溶岩の壁に阻まれアッシャに届かずパワーは無くなってしまう。

 

 


そんな!
ソードシャイニングを防ぐなんて!

 


スキを見せたら、終わりよ!

 


!!

 

 

アッシャはマリコに近づき、マリコは攻撃されると思い咄嗟に防御する。
が、アッシャはマリコの剣を掴んでいた

 

 


これでもまだ戦えるかしら!?

 

 

アッシャの手が赤く燃え、灼熱となった手はマリコの剣の刃を根元から溶かしてしまう。

 

 


剣が!!!

 


マリコ殿!

 

 

剣が折れて動揺するマリコをガラドゥは抱え、アッシャと距離を取る。

 

 


マリコのその剣を使え!

 


え!?
でもこれって皇王様から貰った・・・

 


んな事言ってる場合かよ!
いいから使え!

 

 

シルビの横をリスキンが駆け抜ける。

 

 


俺が時間を稼ぐ!
シルビはマリコを頼む!
ガラドゥ、行くぞ!
マリコ、それと・・・・・。

 


承知した!

 


!?
ちょ、ちょっと!!

 

 

リスキンはマリコに小声で何かを言うと返事を待たずにガラドゥと共に駆けて行く。
そして、リスキンは自分の中の自分に祈る
正義の為に再び自分に力が欲しいと。
ここを抜けるのではなく、仲間を守る為に・・。

 

 


リスキン殿!?

 

 

ガラドゥは、リスキンが当のリスキン自身が嫌悪していたはずである内なる“闇”の力を使うことに驚いた。

 

 


問題ない・・・!
自分の力は自分の正しいと信じることの為に使う!

 


リスキンもやる気になったみたいね!
いいわよその眼、ヘルガに立ち向かった時の様な真っ直ぐな眼差しは好きよ!

 


1つ聞きたい、何故お前はヘルガを今まで野放しにしていた!
皇王様にも何も話してなかったのだろ!?

 

 

通常の数倍のスピードとパワーで迫るリスキンだが、アッシャは軽々と避ける。

 

 


野放しにした訳じゃないわ。
私の手で葬ってやろうと何度も考えた。
ダルメラに話そうとしたことも何度もあった。
けど・・・私に届く“天啓”は私がそれらをする事を許さなかったのよ。

 


その“天啓”に縛られ続けるのがお前の役目だとでも言うのか!

 


そうよ!
民を焼き殺し、700年前の文明の真実をも焼き払った。
その代償として永遠の命と天啓を授かったのよ!

 


!?
なんでそんなことを!

 


憎かった…
ただそれだそれだけよ。
共に戦ったみんなは、ミエラやヘルガのように殺された。
私はそこそこ力が残ってた、だから抵抗する力が残ってた。
だから返り討ちにしてやったの。
殺して殺して、殺しつくしたわ!

 


真実を焼き払ったのは、何故!?

 


ミエラたちがあんな風に殺されたなんて誰にも知られたくなかったの、愚かなことにね!
そうでなければ、私は心がもたなかった。

 

 

そういうとアッシャは炎をこぶしにため込んだ。

アッシャの炎を纏った拳がリスキンを狙うが、ガラドゥが受け止める。

 

 


しかし、そなたの目は美しく澄んでいる。
敵意ではなくまるで尊敬に値されているかの様な目だ!

 

 

ガラドゥも武装を外し、神速の動きを見せる。

 

 


ええ、まさにその通りよ!
ここまで強い勇者達は初めてだもの!
流石、ヘルガを倒しただけはあるわ!

 


おいマリコ。

 


解ってる。
使いたくないわけじゃないのよ・・・。

 

 

マリコは固く眼を瞑った。
そして、覚悟を決めたようにぐっと歯を噛み締める。

 

 


・・・解った。
でも約束して。
私の戦いの私に何も言わない、口出ししないって。

 


・・・?
あぁ・・・解った。

 


ミランヌ!
今からリスキンだけに回復魔法をかけ続けて!

 


え!?
は・・はい!

 

 

突然のマリコの指示に少し驚きを見せるも、ほぼ無傷のリスキンへの詠唱を開始した。

 

 


リスキン!

 


マリコ!

 


スキを見せたらアウト!

 

 

アッシャはリスキンの首を強く掴み、指で3つカウントする。

 

 


!!!

 


この仲間から脱落者は出ないと思ったんだけど。

 

 

だがリスキンはにやりと笑い、アッシャの身体を掴む。

 

 


俺は死なない・・いや、死ねない・・。
だが、今だけのお前は道連れだ!!

 


!!

 

 

次の瞬間、リスキンの身体を貫通してアッシャの胴体に深く剣が刺さった。

 

 


ぐふっ!!

 


リスキン!
大丈夫!?

 

 

リスキンを後ろから刺したのはマリコだった。
だがこの作戦を言ったのはリスキン自身でもあった。
アッシャの力は凄まじい。
そのアッシャに血を流させることを、自ら囮となる事で成功させたのだ。

 

 


さぁ・・・アッシャ・・。
お前に血を・・流させたぜ・・。

 


予想外の攻撃だったけど、これは確かに私の負けだわね♪

 

 

そう言うとアッシャはリスキンを離し、胴体に刺さった剣を身を引いて抜く。
するとアッシャの傷口は見る見るうちに塞がり、無傷とほぼ変わりない状態になった。

 

 


リスキン!!

 


大丈夫だ・・・。
急所は外すように言ってある。

 


でも・・・・。

 

 

マリコはいくらリスキンの願いとは言え、当然仲間を刺すことに抵抗はあった。
だが、そうしろと言った時に一瞬見せたリスキンの眼は、そうしないとまた過去のリスキンに戻りそうな、そんな雰囲気さえ感じさせるほど願いの篭った目線だった事をマリコは覚えている。
だからこそ刺したのだ。

 

最近のリスキンは・・・ひたすら償いのみで生きていたのとは違う、何か別の雰囲気が出ていたのだ。
未来を見始めている、そう思えた。
それを・・・未来を見ることを失ってほしくはなかった。

 

 


・・・・早くその剣を抜け・・・!

 


あ、ごめん!!

 

 

マリコは慌ててリスキンに刺さっていた剣を抜く。

 

 


なんと言う荒い戦法だ・・。
1歩間違えば死んでいたかも知れぬと言うのに・・・。

 


いや、マリコなら大丈夫だと思ったぜ。
剣術にゃアホほど慣れてるしな。
・・・まぁ、俺も見たとき焦ったけどよ・・。

 


でも見事だわ。
勇者とはいえ普通の人間が私に攻撃を与えたのは初めてだし。
その力、団結力もしっかりと見させてもらったわ。

 

 

アッシャはそう言うと炎の壁を解く。

 

 


うん!
あなた達ならきっと大丈夫。
でも皆、勇者様だけは大事にしてよ?

 


言われなくたって。

 

 

皆はシルビの言葉と同時に頷く。
するとアッシャは普段の笑顔に戻る。

 

 


じゃ、これにて試験終了!お疲れ様でした♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アッシャは両手を広げ、全員をその場から瞬間移動させ、バルコニーへ戻ってきた。

 

 


おぉ皆!
それにマリコ!
無事であったか!

 


無事も何も私が殺すわけないでしょ。

 


いや・・絶対に殺しにかかってきたよな

 


異論ない。

 

 

シルビとリスキンは小声で言いあった。

 

 


勇者としての資格はもう大丈夫。
胸を張ってこの方が勇者だと公言できるわよ、ダルメラ皇王。

 


お、おおそうか。
マリコ・・・よくぞ頑張った。

 


いえ・・・私一人の力では為しえない事でした。
私の力ではなく、全員の力あってこそです。

 

 

マリコの言葉にダルメラは深く頷く。
顔を赤らめながら・・・。

 

 


それでこそ・・・それでこそマリコだ。

 


・・・・・?

 

 

その様子を見ていたゾゾルダンがガラドゥに話しかけた。

 

 


・・・・よぉよぉ

 


どうしたゾルダン殿。

 


あの皇王、なんであんなチビっこ勇者様にイッっちまってるんだ?

 


・・・・・盲目なのだよ、そういう物は。

 

 

相変わらずダルメラのマリコへの愛は非常にわかりやすい。
当のマリコは全く気がついていないが・・・。

 

 

続く

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一同はアッシャに言われてバルコニーに集り少しの時間が過ぎていた。
そこにはダルメラも一緒に居た。

 

 


は~い皆さんお待たせしました~。

 


お話とは何でしょうか?

 

 

アッシャは解ってるという素振りを手でするとバルコニーの縁に腰をかける。

 

 


皇王様はもう皆に昔話はしたよね?

 


知っている限り、全て話した。

 


そう、それなら話が早いわね。

 

 

そう言うとアッシャは空に向かって手を広げる。
すると空がまるで古いフィルムの様な映像で包まれる。

 

 


な、なんだこりゃ?
随分と古い景色だなこの映像・・。

 


少なくとも数十年前という訳ではなさそうだ。

 


この景色は・・・・。

 

アッシャが映し出した映像にリスキンは妙な見覚えのある感覚が過ぎった。

 

すると

 

 


・・・・・?
皆さん一体何の話をしているんですか?
私には夜空しか見えませんが・・。

 


・・・。
余にも皆の言う古い景色というのは見えていない。

 

 

映像が見えている者達はその言葉に驚く。

 

 


・・ムダよ。
今私が映し出す絵が見えるのは“天啓”によって選ばれた者達だけだから。

 


天啓・・・・。

 

 

エルダはその言葉を聞いて何かに納得したかの様に心の中で頷く。
ダルメラは全てをわかっている風であった。

 

 


ダルメラ皇王、お話があります。
よければこちらで・・。

 


ああ・・・解った。

 

 

エルダは頭を下げるとダルメラと一緒に宮殿の中へと戻っていった。

 

 


それで、この景色の何が凄いの?
”天啓”って何?

 


焦らない焦らない♪
今からあなた達が知るべき事が見えるから。

 

 

そういう映像は切り替わり、広大な戦場の様な光景が映し出された。
そこには大きな影に立ち向かう4人の姿とその後ろに8つの人影があった。

 

 


これって!!

 


・・・・700年前の勇者達・・!?

 


・・・・。

 

 

その映像は古く、殆どの人物はかすれて見えなかった。

 

 


これはダルメラの言っていた“無くされた歴史”の一部よ。
本当は4人じゃない。勇者とそれぞれの属性を持つ賢者8人。
その他にも魔法使いや戦士たち、数多くの志を共にした皆が居たわ。
そしてこの力を持って魔王は封印された・・・いえ、封印が限界だった。
魔王が放った魔物を倒すために皆必死だったからね・・。

 

 

映像は長い戦いの末、黒い影を抑えこみ封印した所で止まった。

 

 


なぁどうしてアンタがこんな物を・・・

 


待って。
まだ続きがあるの。

 

 

アッシャがシルビの話を止めて映像が早く流れ、情景は一変する。

 

 


こ・・これは一体!?

 


・・・人々が勇者たちを襲ってる・・・。

 

 

マリコはそう言いながらもダルメラの話と受け取った剣を思い出した。

 

“人類の滅びを一歩手前で救った勇者から、奪ったのだ。
功績をも封じて・・・。”

 

そうすると映像から突然声が聞こえてきた。

 

 


“どうしてです!私たちは民の味方です!攻撃しないで下さい!”

 


“黙れ!魔王が封印された今、この世は平和になった!
もう勇者なぞ必要ない!勇者が居るから悪が生まれるのだ!”

 


“それは違います!私達は再び復活するかもしれない魔の手から民を・・・!”

 

 

だが勇者ミエラの言葉よりも大勢の民の剣が勇者の身体を貫いた。
それは先ほど戦いを友にした多くの戦士たちの姿もあった・・。

 

 


なんてこと・・・・

 


“賢者だ!賢者も勇者と同じだ!皆殺しにしろ!”

 


酷すぎる・・・人間のする事じゃねぇ・・・。

 

 

シルビは顔を背けたい気持ちを堪えてその場面を見ていた。
すると、そこには驚く存在が映っていた・・・。

 

 


“私は光の賢者ヘルガであるぞ!何故私を攻撃する!”

 


!!!!!!!

 


“光があるから闇が生まれるのだ!もうこの世に光の存在は必要ない!”

 


“・・・それ以上攻撃の意志を見せるならこちらも力を使うぞ・・・”

 


“平和な民を攻撃するつもりかこの悪魔め!殺せ!殺せ!!”

 

 

飛び掛るように大勢の民がヘルガに襲い掛かる。
だがヘルガは押し寄せる人の波を吹き飛ばす攻撃が精一杯だった。
魔王との戦いにで疲弊していた為に・・・。

 

 


“・・・何故だ。何故我々と人々が争わねばならんのだ・・!”

 


“今だ!放て!!”

 


“!?”

 

 

不意を突かれたヘルガの身体に何本もの矢が刺さる

 

 


“うぐ!?
こ・・・この力は・・・・闇!?”

 

 

ヘルガが矢を自らの身体から引き抜くとそこには魔物の鋭い爪が先端に括られていた。

 

 


“ぐ!!・・・おのれ・・魔族よりも醜い者共め!!
それが世界を救ったものに対する仕打ちか!”

 


“勇者は要らない!賢者も、光も必要ない!死んで償え!”

 

 

雨の様な矢がヘルガの頭上に降り注がれる。

 

 


“この・・・悪魔め!!地上に巣食う悪魔どもめ!!
この恨み・・必ずや貴様達醜い人間に返してやる!!!”

 

 

ヘルガはそう言い残すと矢の雨に撃たれ、光の粒となって消えてしまった。

 

 


“これで光は死んだ。だが勇者の仲間、賢者は一人残らず殺せ!”

 

 

映像はそこで一旦ノイズのように走って止まる。

 

 


これが話の続き。
・・・この紛争によって人間は光の希望を自ら消してしまったわ・・。

 


なんであいつが・・・。

 


ヘルガは・・彼女は元々光の魔法使いであり、賢者になった。
だけど死後の魂は闇に捕まり、憎しみと悲しみを拠り代に蘇生されたわ。
・・・人間を憎みその人間を消す為の存在、魔王を復活させる忠実な眷族としてね。

 

 


・・・・。

 

 

マリコとシルビは複雑な気持ちを抱いていた。
ヘルガがあそこまで残酷で残虐な行為を愉しんでいた理由。
それは人間によって曲げられた憎しみと悲しみの具現化だったと言う事を知って・・。
無論、だからと言ってヘルガを許すわけではない。
だが・・・同じような事になった時、自分は人々を許せるのだろうか。

 

 


ねぇ・・・・ガラドゥ・・・。

 

 

マリコは力の無い声でガラドゥを呼ぶ。

 

 


マリコ殿、我々の行いは間違ってなどいない。
どんな過去があれ、禁忌を起こした者が裁かれるのは当然だ。
己の行動に迷いを生じさせるな。

 


・・・・。

 

ガラドゥの言葉にシルビは小さく頷いた・・。

 

 


何で皆、こんなことを・・・。

 


恐れたの。

 


皇王様が言っていた、己らの罪がばれることをか?

 


いいえ、それだけじゃないわ。
彼らはミエラや賢者達の力の矛先が自分たちに向かうのを恐れたの。

 


どうなったらそんな思考にいたるんだよ。

 


どういう思いで彼らが戦ってたか、何も知らなかったから・・・。
自分たちと同じ人種だと思ってしまったから・・・
いずれ自分たちに牙をむいてしまったらと、恐怖を抱いてしまったの。
何っていっても当時の最新兵器も効かなかった大魔王を封じたからね、ミエラや賢者達は。

 

 

そう会話しているうちにリスキンが口を開いた。

 

 


アッシャ・・と言ったな。
そろそろ聞かせてくれないか。
何故アンタがこの事を知っているんだ。

 

 

リスキンの言葉にアッシャは眼を閉じて口を開く。

 

 


・・・・・。
この魔王封印の時に炎の賢者として戦ったのは私よ。
そしてこの出来事の大半を焼き払ったのも私。
そして美談を書き・・この世に広めたわ。

 


!!!!!!!

 

 

其れにはその場全員が驚いた。

 

 


焼いて、美談を・・・
それも・・・さっきの“天啓”ってやつか?

 

 

アッシャは首を振る。

 

 


天啓はこの後授かったわ。
多くの民にはこの事実を伏せ美談を・・・。
そして、いずれ現れる勇者と強き志を持つ者だけに真実を、てね。

 

 

その言葉に一同は同じ事を考えた。
アッシャの“天啓”は誰かの意志によって与えられている。
そしての与えた者は自分たちにそれを見させた・・・。

 

 


しかし魔王と戦うと言っても賢者は・・・・・アッシャ殿だけではないか。

 


大丈夫よ、そこは彼女が切り開いてくれる。

 

 

アッシャはマリコを見る。

 

 


え、私・・・?

 


ダルメラが集めてくれる各大陸の皆を・・・あなたの志で1つにするのよ。
かつての勇者は皆を集めようとはしなかった。
魔王を封印した後で・・・と。
それが最悪の結果を招いてしまった。
だからあなたには・・・同じ過ちを繰り返さないでほしい。

 

 

アッシャの真っ直ぐな眼にマリコは頷く。

 

 


でも・・皆をまとめるなんて・・・。

 

 

マリコはシルビを見る。
戦場に赴く時、皆を奮起させるのはシルビの得意技と言ってもいい。
なのに、自分が・・・。
だが、シルビはマリコの頭にポン、とやさしく手を置く。

 

 


今回ばかりは勇者様の声が必要だ。
でも安心しな、お前の後ろにはずっと居てやる。
だから自信を持って皆の前に立て。

 

 

シルビの声にガラドゥ、リスキン、ミランヌも頷き、優しくマリコを見る。

 

 


皆・・・。

 


決意は固まったみたいね。

 


ええ、もう逃げない・・あんな事絶対繰り返させない。

 

 

マリコの力強い言葉にアッシャは笑顔になる。

 

 


流石は光の勇者様ね。
それじゃあ・・・最後の“天啓”を与えるわ。

 

 

全員は頷く。
するとそれと同時にアッシャは自分と全員を何処かへ飛ばしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして誰も居なくなったバルコニーを見つつ、話すものが居た。


ダルメラ皇王・・この世を救えるのは今回が最後かも知れません。

 

 


・・・そうかも知れぬな。
だが、何故だろうな・・今の余に不安という気持ちは無い。

 

 

ダルメラは落ち着いた表情で言う。
ダルメラは地下都市のことも太古の非道のことも知らなかった。
しかし、アッシャが何者かは知っていた。
天啓が彼女を縛っていることも。

 

皇太子時代にアッシャは”あなたが、この者は、という人がいたら私を呼んでね”・・・とダルメラに言った。
アッシャの目を見て、アッシャが語ったことは真実であるということをダルメラにはわかった。
そして、幾度となく”この者たちなら”と思いった者たちが現れたらアッシャを呼んだ。
それらの者たちは全て天啓が下った。
しかし、誰もあのバルコニーから戻ってきたものはいなかった。

 

いつも、この者たちこそ、と思っても不安があった。
だが今はない。

 

 


あの者達ならやってくれる。
今まで見た仲間という物で最も強い団結力を感じる。
それにマリコならきっと・・・いや必ず皆を纏められる力を持っている。

 


流石ですね、人を見抜く力を持つ素晴らしきお方だ。

 


余が惚れた女であるからな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリコ達は何もない真っ黒な場所に連れて来られていた。

 

 


こ・・・ここは?

 


ここは~私が魔法のマジックを練習する特別な練習場で~す♪

 

 

そう言うと全員の周りに火柱が吹き出し、炎で作られた空間が出来上がる。

 

 


!!
アッシャ殿・・・何をするつもりだ。

 

 

ガラドゥの声にはっとし、全員は臨戦態勢を取る。
そんなガラドゥに対してアッシャはサーカスの時と同じような声で喋る

 

 


最後の天啓、それは“あなた達の力が本物か試せ”で~す☆
なのでー、あなた達1人でも私に血を流させたらあなた達の勝ち!
でも、あなた達全員が動けなくなって3秒経ったら~・・・

 

 

次の瞬間、アッシャは全員に鋭い視線を向ける

 

 


勇者じゃないって事で全員この場で灰になってもらうわ。

 


!!!

 

 

その時、マリコ達は自分たちの周りにある積もったような灰に目が行った。

 

 


まさかこの灰は・・・・

 


ここの試練で“勇者失格”となった者達か・・。

 


なるほど・・・。
貴女に勝てなきゃ魔王に戦う資格もないって事なのね。

 

 

マリコは死が直面してるのを知りつつもその心は自信に満ち溢れていた。
そう、こんな場所でやられる訳には行かない。
真っ直ぐな意志を全身に込め、アッシャを睨みつける。
その目線にアッシャはようやく満足したような笑みを向ける。

 

 


私の名は大火炎の賢者アッシャ。
聖なる天啓の元に今からあなた達を全力を持って試します。
・・・手加減は出来ないからね?♪

 


臨む所よ!

 

 

マリコ達はアッシャとの戦闘に入った・・・。

 

 

続く

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ダルメラの計らいによって晩餐会が開かれ、客人として新たに迎えられた、
サーカス団のアッシャ、ゾルダンも加わり賑やかな晩餐会となっていた。
マージは作業が終わってから、と言って食事を後にしていた。

 

そしてララの計らいによりマリコはダルメラの隣に座ることになり、その距離にダルメラはかなり緊張していた。
しかも、マリコは自分が贈った着物と簪を身につけている。

 

 


きょ・・今日の晩餐会には新たな客人も一緒だ。
・・・皆の者、・・す・・すき・・好きな物を満足いくまで食べてくれ。

 


お、好きなだけいいたぁ有難ぇ。
長い間水ン中居た所為で食欲が出なくて腹減ってたんだ。

 

 

そう言うとゾルダンは自分の前の皿を豪快に持ち上げて全て食べてしまった。

 

 


同じ料理をもう1回もらおうか!

 


はっ、すぐにお持ちします。

 


ゾルダン殿、あまり行儀がよくないですぞ。
自由と言ってもその中でも礼儀というのがあってだな。

 


あ~ウルセェウルセェ。
楽しい食事が不味くなる説教は御免だぜガラドゥ。

 

 

そう言って笑い飛ばすゾルダン、2人の仲は会話を通してすこし知り合えてる様だった。

 

 


して・・マリコ。
その簪も着物・・・似合って・・・る・・・ぞ・・・。
どうかな、それは・・・。

 


素敵な贈り物、ありがとうございます・・・。

 

 

食べにくいし動きづらいし、気に入ってないのだが、まさか口にするわけにいかないマリコ。

 

 


そ、それでだな、今回の・・・食事は気に入ってもらえたかな?

 


は、はい。
ここ数日お世話になっている上にここまでしていただいて恐縮です・・。

 

 

実際マリコは困っていた。
晩餐会と言ってもマリコ達が居る間は非常に豪華な食事がいつも振舞われていた。
丁寧な持成しを受けたのは初めてではないが、ここまで続くのは初めてだった。
そしてまたその続く好意に恐縮してしまい、あまり食事に手をつけられなかったのも事実であった。

 

 


・・・・おい。

 

 

シルビは小声でマリコを小突く。

 

 


なによ?

 


少しは美味そうに食えって。
お前のその緊張しきった態度に皇王様も困ってるじゃねーか。

 


そんな事言ったって・・・。

 

 

するとそこに水を差すような言葉が刺さる。

 

 


でもこの料理ってさ、どっちかと言うと恋人におくる料理であって晩餐用じゃないよね。

 


・・・・・・。

 


そうなの?

 


皇王様にとって勇者様は特別な存在。
せめて食事でもと我々が敬意と感謝をこめてお作りしました。

 


!!

 

 

直球の発言に思わずララを見るダルメラ。
しかし、マリコはその”特別”を自分が勇者という存在という意味と思った。

 

 


そうだったんだ・・じゃあ美味しくいただかないとね。

 

 

マリコはそういうとようやく“普通に”食事を口に運んだ。

そして一同は思った。

 

 


(やっぱり気付いてない・・・・。)

 

 

そうこうしながら楽しくもすこし距離のある食事をしてしばらくしていた時だった。

 

 


みなさーん!サーカスの用意が出来ましたよー!
どうぞ広場へ集って下さーい!

 


お、いよいよか。

 

 

マージの声に食事を終えていた皆は揃って広場に集った。

 

 


このセットは・・・。

 


これをあの少女が一人でやったというのか?

 


これは素晴らしい。
数時間で完成させたとは思えないですね。

 

 

そこに広がっていたセットはおよそすぐに作ったとは思えない豪華なサーカス場だった。

 

 


皆様お待たせ致しました。

 


は~い♪
紳士淑女の皆様、これより私アッシャが送る最高のショーをご覧下さ~い!

 

 

アッシャの声と同時にリズミカルな音楽が流れ、遠くから花火が何発も撃ち上がる。

 

 


わぁキレイ!

 


すげぇ・・・!!

 


これは・・・。

 

 

それぞれが感動している中、ダルメラは未だに緊張していた。

 

 


ダルメラ様、今が好機です。

 


さぁ光の勇者様の手を握るのです!

 

 

二人は花火の音でダルメラにしか聞こえないように言う。

 

 


う・・うむ・・よし・・。

 

 

ダルメラは意を決してマリコに近寄り、手を伸ばそうとする。
だが、

 

 


ゾルダン、ファイヤーフラワー!

 


夜空のドラゴンブレスをとくと目に焼きつけな!!

 

 

アッシャが投げた球を投げると同時にゾルダンは空へ飛びあがり、
勢いよく炎を吹くと球が炎の閃光を放ち周囲が明るく照らされる。

 

 


こんなに近くで花火を見たの初めて!

 

 

マリコは嬉しそうに手を叩いてダルメラの手を意図せずかわしてしまう。

 

 


・・・・。

 


大丈夫です、まだ機会はあります。

 


マージ!レッツゴー!

 


はいなー!

 

 

アッシャの掛け声と同時に端から出てきたマージは沢山の動物を連れて出てきた。
そして動物達は器用に流れるメロディに併せて楽器を鳴らしていた。

 

 


動物を操れるのか!

 


動物達も楽しそうですわ。
これは見ていて癒されますわね。

 


ねね、凄いよね!
シルビも凄いと思うよね!

 

 

マリコはあまりの楽しさにふとシルビの両手を掴んで力説する。

 

 


お?
お、おう、俺もこんな派手なサーカスを見るのは始めてだからな。

 

 

自分じゃなくてダルメラの手をつかめ、と思うシルビ。

 

 


光の勇者様、楽しんでいただけているご様子で♪

 


だってこんなに凄いの初めてだもの!

 

 

嬉しそうに言うマリコ。

 

 


・・・。

 

 

ダルメラは思った。
やはり勇者と言ってもまだ年端も行かない少女だと。
自分にはなかった幼い頃の純粋な“楽しさ”を彼女は今楽しんでいる。
その喜ぶ姿にダルメラは純粋に愛おしいと見ていた。

 

 


このような催しを用意して下さった方にも感謝しないといけませんわね♪

 

 

ララはそう言うとダルメラに目で合図を送る。

 

 


た・・楽しんでくれているようで何よりだ、マリコ。

 


あ・・皇王様。

 

 

ダルメラの姿を見るとマリコはいつも通りの表情をへと戻り、姿勢を正しくしてしまった。

 

 


あ・・楽な格好で楽しんでもらって・・か、構わないぞ?
余もこ・・このような・・盛大な催しはとても楽しんでいるから・・な。

 

 

マリコが隣に居ると言うだけで緊張しカタくなってしまうダルメラ。
そんなダルメラを見てマリコは余計に“いつも通り”になってしまう。
そんな2人をみてシルビは思わず仲を取り持とうとする。

 

 


あ、俺も凄く楽しんでますよ!
どうしたマリコ、さっきみたいに一緒にテンション上げようぜ?な!?

 


・・楽しんでもらえて何よりだ。

 

 

ダルメラは優しい微笑みをマリコに返す。
だがマリコはその表情を自分が無理にさせてしまったと思ってしまう。

 

 


・・・すみません、気を遣わせてしまい・・。

 


い、いや・・・!
全然その様な事はないのだ・・・ぞ?!
マリコが謝る必要は無い、むしろ余が感謝しきれないほどだ・・!

 

 

慌ててかぶりをふるダルメラ。だがそれが余計に浮きだって見えてしまっていた。
そして楽しいサーカスショーの時間が、そして2人の距離も全く進展も見せず、流れていった・・。

 

 

 

 

 

 


は~い、以上をもちましてアッシャのサーカスショーは終了で~す♪
皆~楽しんでくれてありがとー!

 

 

アッシャの終了の声と共に皆一声に拍手を送る。

 

 


素晴らしい芸の数々で感動致しました。

 


ああ、こりゃ何度でも見たくなるぜ。
な、マリコ。

 


え?え、ええ・・そうね。

 

 

いきなりのシルビの振りに思わず生返事を返してしまうマリコ。

 

 


ダルメラ様・・。

 


ああ、解っている。

 

 

この時リビルは今一度好機、と言う意味で呼んだのだがダルメラは作戦失敗の
呼びかけだと思ってしまい、残念そうな背中を残して踵を返してしまう。

 

 


・・・私、何かしちゃったかな。

 


・・・・・・・・。

 

 

歯がゆい気持ちを心に秘めつつシルビはマリコを見つめる。

すると・・

 

 


ねぇねぇ勇者とそのお仲間さん。

 

 

アッシャの言葉に皆は一斉にアッシャを見る。

 

 


うん、皆さん♪

 

 

アッシャは嬉しそうに言う。

 

 


良かったら後でバルコニーで待っててもらえるかな?
私が旅した中で一番凄い事を教えちゃうわ。

 

 

皆は思わず顔を合わせる。

 

 


いいけど・・今じゃだめなのか?

 


楽しい事はちょっと焦らして教えたいの♪
だから~お願い!

 

 

そう言われて皆は妙な引っ掛かりを覚えながら頷いた。

 

 


解った。バルコニーだな。

 

 

リスキンの確認の言葉にアッシャは頷くと。リスキンも頷き返した。

 

 


ありがと♪
じゃあ先に戻ってて。
私も後片付けしたら向かうわ。

 

 

そう言うとアッシャは静まり返ったサーカス場へと走っていった。

 

 


・・・何なんだろう。

 


今回ばかりは我にも解らぬ。

 

 

個々に疑念を持ちつつも、皆は宮殿へと戻っていった・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、すこし離れた場所・・・。

 

 


手ごわいですわねぇ。マリコ様は。

 


ええ、ですが必ず。

 


勿論ですわ。

 

 

ダルメラを後ろで応援する二人も頷きながらマリコを見ていた。

 

 

続く

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夕食の支度が出来たというのに、マリコとシルビは相変わらずダルメラからの贈り物でもめていた。
宴の席で着ろと言うシルビ、それを嫌がるマリコ。

 

 


いいか、せっかく皇王様が宴を用意してくれたんだ!!
お・ま・え、の為にだ。

 


でも、これじゃあ動きにくいわ。

 


そういう問題か!
食って座るだけだろう、我慢しろ!

 


・・・この冠をはずのは嫌。

 


いいか、皇王様はお前を想ってプレゼントしたんだ。

 

 

シルビは直球勝負した。

 

 


でも・・・。

 

 

だが、其の直球もマリコには通じなかった。

 

 


でも、じゃねえ!
いいから着ろ!!
エルダス国王陛下だって喜ぶ!!

 


そうなの?

 


そうだ!
なんせ、他国からの王にも贈り物を頂いたなん知ったら、あの陛下なら大喜びだ!
陛下を馬鹿にするな!
そんな小さい器だと思ってるのか!
あの陛下を!!
喜ぶ、陛下も絶対喜ぶ!

 


・・・言われて見ればそうね。
陛下なら、喜んで下さるわね・・・確かに。
でも、宴の席だけよ。

 


よっしゃーーーー!!!

 


???

 

 

シルビの喜びように頭をかしげるマリコ。
シルビはマリコとダルメラの関係が、少しは進展できればと願った。

 

 

 

*********************

 

 

 

マリコの着付けをミランヌが手伝っている最中。
別室ではシルビがため息を吐いていた。

 

 


あの馬鹿、全然、わかってねー。

 


まあ、マリコ殿は着るといったのだ。
よいことだ。

 


そうだけどさ・・・。
でも、マリコは皇王様を皇王様としか見てないぜ・・・。
どうしたらいいもんか・・・。

 


シルビはマリコの兄を通り越して父親だな・・・。

 


だってな、あいつの立場を考えてみろよ!
早々、嫁にいけるチャンスなんて来ないぞ!
昔から、あいつの性格や立場からしても、難しいと思ってたんだ!
なのに、だ。
あの皇王様は、なんと、女としてマリコを見た!!
ロリコンとは思ったが、チャンスなんだ!!!

 

 

力説するシルビ。
ロリコンだろうがなんだろうが、チャンスは逃したくない。

 

 


だが、無理もない。
あそこまで威厳に満ち溢れ、国民どころか世界を救おうとしておられるお方だ。
そういう対象に見られているとは考えられないんだろう。

 


いや、わかりやすいだろう、あれは・・・

 


確かに・・・。

 


マリコは鈍すぎる。
皇王様だったらマリコを幸せに出来るのにな。

 

 

ダルメラの信者リスキンは溜息を吐いた。

 

 


いいこと言うじゃねえか、リスキン!
そうだよな、俺もそう思っう。
大切にしてくれるぜー、あの方なら。
女としてな!!!

 

 

女として、というあたりがシルビにはポイントだった。
光の勇者として嫁に行かせるなんて出来ない。
マリコを女として見ているダルメラこそが素晴らしい相手で千載一遇のチャンスだとシルビは思った。

 

 

続く

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その日の夕方、ダルメラに連れられ一同は外の広場に呼ばれていた。

 

 


皇王様、ここで何か?

 


まぁ慌てるな。

 

 

ダルメラがそう言うと、突如として地震のような揺れが大きくなってきた。

 

 


地震!?それもかなりの・・!

 


・・・・。

 

 

リスキンも地震と同時に近づいてくる気配に警戒する。
すると、轟音と共に遠くから列車が地面から出てくるのが見えた。

 

 


!?

 

 

するとその列車は颯爽と広場に停車した。

 

 


お疲れ様でした。
メイラ皇国、ダルメラ皇王前です。

 


久しいな。
その様子だと急ぎで来てくれたのか?

 


お久しぶりです、ダルメラ皇王。
手紙を頂いてからは特急へ運行を切り替えました。

 


れ、列車が喋ってる!?

 


その前に何で列車が地面から出てくるんだよ・・・。
まぁ・・喋る列車も確かに変だけどよ・・正面に顔も無いし。

 

 

すると列車の扉が開き、一人の女性が出てきた

 

 


ハイ皆様初めまして~♪
私はこのサーカストレインのオーナー、また我がサーカス団の団長のアッシャで~す☆

 

 

お辞儀をするアッシャに一同はつられて頭を下げる。

 

 


・・・先ほどの気配はアンタか。

 


皇王様、見せたいものとは・・。

 


うむ。
アッシャは世界を廻ってサーカスを公演している一流の芸人だ。
滅多に見れるものでもないから今日は特別派手にしてやってくれ。

 


了解しましたぁ!

 

 

アッシャの影からひょこっと顔を出してマージが返事をする。

 

 


あ、この子はマージ。
見習いの助手よ。

 

 

マージはぺこっと頭を下げる。

 

 


後は~・・・

 

 

アッシャが何か言おうとした時、列車の影から何かが飛び出すのを見た。

 

 


今の何?!
でっかいコウモリみたいだったけど・・!

 


バカ!
ありゃどう見てもドラゴンだったろうが!

 


ドラゴンだと!?

 

 

全員は慌てるようにして武器を構える。

 

 


あ~皆さん!ちょっと落ち着いて!

 

 

だがアッシャの静止とは間逆の形で何かが勢いよく地面に降ってきた。

 

 


ウガーー!!!
全く・・だから水は嫌だと・・・

 


おりゃー!!

 


うわ危ねぇ!!
何しやがるこのガキ!!

 


私の剣をかわすなんて、やるわね!!

 

 

いきなり斬りかかってきたマリコにゾルダンは激怒する。
全く別の存在に。

 

 


おい皇王さんよ!
まさかここに呼んだのは俺様をステーキにする為か!?

 


まぁ落ち着けゾルダン・・そなたのその様相を見て皆混乱してるだけだ。

 


皇王様、この魔物と面識が・・?

 


誰が魔物だと・・・・・?

 


あーもう!
いいから話を聞いてってば!

 

 

アッシャの一声で周囲に沈黙が広がる。

 

 


・・・コホン、彼はゾルダン。
見た目は悪そうな奴だけど私の仲間。
いいヤツだし、芸も凄いから許してあげて。

 


・・・おうよ。俺様の名はゾルダンだ。
俺様みたいなカッコイイこのドラゴン様を斬ろうとするとはとんでもねぇ。

 

 

ゾルダンは若干不機嫌そうなトーンで喋る。

 

 


つまりそのドラゴンはとりあえず味方ってワケか・・・。

 


とりあえず、じゃねぇよ。
思いっきり味方だ、これでも俺達ぁすっげー強ぇんだぜ?
んでもってサーカスしながら色んな大陸廻ってんだ。
ちったぁこのドラゴンの勇ましい姿ぐらい覚えとけっての・・。

 


え、じゃあアナタ達も魔族の討伐を?

 


まぁそんな所だ。
見た所、アンタが光の勇者様っぽいな。
その眼光や良し、修羅場をくぐってきたと見える。

 


まあ、紹介もいいがアッシャ、準備があるのだろう?

 


お任せ下さい皇王様!
このマージが今晩までに完成させます!
それまで皆さん自由行動してて下さいな!

 

 

マージはそう言うとそそくさと列車の中から荷物を取り出しセッティングを始める。

 

 


失礼だが、ゾルダン殿も見た所獣人と見受けられる。
しかし・・・ドラゴンの獣人など存在していたのか?

 

 

ガラドゥの質問にゾルダンは困ったように目線を逸らす

 

 


あ~・・・話すと長くなるんだがな。
・・・まぁいい何かの縁だ、教えてやるから向こうで話そうぜ。

 

 

そう言うとゾルダンはガラドゥと一緒に話し始めた。

 

 


え~と後要るのは~・・。

 


・・お待ち下さい。

 


ほぇ?

 

 

ミランヌはマージに目線を向ける。
いや、マージの後ろにある列車に向ける。
その目線に列車も気付いた様子であった。

 

 


マージ、気にせず作業に戻ってもらって大丈夫ですよ。

 


承知ィ!

 


あなたは・・・。

 


わざわざ声をかけて下さり感謝しきれません。
私の名はThe Circus。サーカスとでも列車でも自由にお呼び下さい。

 


会話が出来る、という事は・・・元々お人でしたの?

 


いいえ、私は生まれた時からずっとこの形です。
もっとも、昔はずっとボロボロで錆びて使えない列車でした。
ですがアッシャが錆びた私を修理し命を与えて下さり会話が可能となりました。

 


それにこのパワー・・あなたは動いていらっしゃるのですか?

 


流石は高貴なエルフのお嬢様。
そこまで言われてしまうと手品という冗談は通じないですね。

 

 

そう言うと列車とミランヌはお互いに笑い、ミランヌは列車の横に座る。

 

 


良ければあなたのお話を聞かせてもらえませんか?

 


私の話なんかでよろしいのですか?
私よりもアッシャやマージの方がずっと楽しいお話が出来ますよ。

 

 

ミランヌは首を振る。

 

 


列車と言うのは世界をどこまでも走れると聞いています。
是非あなたが見てきた外の世界の話を聞きたいですわ。

 


解りました。
それでは私の見た数々の世界のお話をしましょう。

 


外の世界の話か。
・・・・・俺も聞いていいか。

 

 

横から会話を聞いていたリスキンも列車の傍に座る。

 

 


ええ、もちろん大歓迎です。
では、まず初めは・・・・

 

 

其の様子を見ながらマリコは口を開いた。

 

 


・・・私の知ってる列車とは存在の次元が違う・・。
線路も走って無いし地面から出てくるって・・・。

 


驚いてもらってこっちも嬉しいわ。
お客様には最初から最後まで楽しんでもらわないとね~♪

 


アッシャさん

 


アッシャ、でいいわ。
ついでに畏まらなくてもいいわ。
普段どおりの喋り方でOKよ。

 


あぁ、解った・・。
アッシャ、1つ聞きたいことがあるんだけどいいか?

 


サーカスの公演内容以外なら。

 


 

 

サーカスの催しの内容が少し気になってたマリコはちょっとガッカリした。

 

 


さっきゾルダンが色んなアッシャと一緒に大陸を廻ってるって言ったのが気になってるんだ。
・・・他の国にも魔族の手は及んでるのか?

 

 

シルビの質問に若干困った表情を浮かべるアッシャ。

 

 


そうね・・魔族だけじゃないわ。
中には魔族の支配によって国全体が魔族を崇拝して存在を隠してる、なんて国も見たことがあったわ。
だけどそれは随分と昔の話だから今はどうかは知らないけど。

 


魔族の存在を国全体が隠してるって言うの?!

 


ええそうよ。
魔族に下れば貧困を無くし、魔族の軍隊により敵国からの侵略もなくなると。
そう唄った魔族に堕ちていった小さな国は見た事がある。
そうなると流石の私も手が出せないわ。
いくら魔法が使えると言ってもただのサーカス芸人だからね・・。

 

 

アッシャはそう言うと溜息をつく

 

 


・・・。

 

 

皆がそれぞれ会話していてしらばく経った時、ダルメラが皆を呼びにきた。

 

 


皆の者、夕食の支度が出来ている。
折角来てくれたんだ、アッシャ達も一緒にどうだ?

 


あ、是非♪

 


貴重な話を聞かせてもらえて感謝する、ゾルダン殿。

 


おう気にすんな。
俺の話で良けりゃ獣人にならいくらでも話してやるぜ。

 


またお話しましょう。トレインさん。

 


いつかお前のように旅の話をしてみたいものだ。

 


楽しんでいただけたようで何よりで御座います。

 

 

皆は会話しつつ、宮殿の中に戻っていった


トレインはご飯に食べないの?

 


私は列車ですから。

 

 

続く

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“勇者と呼ばれる事に意味があるというならば、受け入れる。”
マリコはそう言った。
なんて脆弱な覚悟だろうか。
それに引き換え、ダルメラはどうか。
全てを背負って、受け入れている。

 

 


シルビ、私ってだらしないわよね。

 

 

マリコはシルビに言った。
二人でエルメスの国王からの冠が、とか、メイラ皇王の賜り者がどうのと言い合っている最中だった。

 

 


なに今更なこと言ってるんだ、お前?

 

 

笑いながらシルビは言った。
しかし、シルビには分かっていた。
重責から逃げたいと思う心がマリコの心のどこかにあることを。
マリコは周りが思うほど、強くない。

 

 


なによ、今更って・・・。

 


そのまんまの意味。

 

 

にやりとしルビは笑った。

 

 


安心しろ。
お前がだらしないから俺はついてきたんだからな。
ちょっとぐらいだらしなくたって、俺たちがフォローするさ。
だらしなさ過ぎたら、俺がぶん殴ってやるってな。

 


・・・。
殴るって何よ。

 

 

そう言いつつ、安堵するマリコ。
逃げたい、どこかそう思う自分がいた。
でも、逃げようとしたら、きっとシルビがぶん殴って目を覚まさせてくれる。
そう思うと安心して戦うことができる気がした。

 

 

続く

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マリコ達、勇者一同が居るよりもずっと遠くの大陸を横断する列車の中。
とあるサーカス団が使っている、颯爽と走る列車の中・・。

 

 


ハイ皆今日のショーもお疲れ様でした~♪

 


ふふん、やっぱ俺様の炎の前にゃ今回の観客も虜になっちまったぜ。
次の公演の時はもっとハデに炎を使ってやるとするか。

 


おつかれ~・・て、アッシャー、何か手紙が来てるー。

 


手紙だぁ?この時期にとは随分と遅いな。
公演の依頼なら来年にでも開けな。

 


私もそうしたいけど、とりあえず確認しないと。
マージ、その手紙の差出人は?

 


えーと、えーと、えーと・・この字見たこと無いから読めない!

 


なら俺が読んでやる。
お前は向こうでジャグリングでもして遊んでな。

 

 

そう言うとマージからゾルダンがひょいと手紙を取り上げる。

 

 


あ~こいつぁアレだ、どっかのお偉いさんだな。
名前は無いがメイラ皇国から直筆の手紙だ。

 


あら、それは大変。
早く中身を読んでよ。

 


あ?んなモン自分で読めよ。
お前にも目と脳ぐらいあるだろ。

 


ったく・・このトカゲは・・。

 


今なんつった?

 

 

若干怒るゾルダンを無視してアッシャは手紙を取り上げると封を開ける。

 

 


へぇ~、今メイラ皇国に光の勇者様が来てるんだって。

 


光の勇者様?
それって流行の大道芸人??

 


違うバカ。
ここ最近どっかの大陸で活躍してる女の勇者ってヤツだ。
噂じゃ無敵の悪魔どもをいともカンタンに倒しちまったらしいぜ。

 


凄い!!
大道芸人じゃなくて銀幕スターなんだね!

 


だから見せモンじゃねーっての・・・・。

 


この手紙はバヌー大陸のメイラ皇国、皇王様直筆の依頼だわ。
彼の頼みとなったら、優先するしかないわね。

 


アッシャ!
そのバヌー大陸ってどこにあるの?

 


えっと・・・今がこのあたりだから~・・。

 

 

アッシャが地図をテーブルに広げるとゾルダンが道を辿っていく。

 

 


メイラ皇国はこの辺ね。

 


はぁ!?端から端じゃねーか!
んな所行ってたら次の公演に間に合わねーぞ?!

 


仕方ないじゃない。
彼のお願いだし、それに間違ってもバヌー大陸に降り立った勇者よ?
会ってみないと損じゃない。

 


ゾルダン、私もアッシャの意見に賛成です。

 

 

2人のやりとりに車内放送の様な声が流れる。

 

 


うるせぇ。貨物列車のクセに事ある毎に口挟むんじゃねぇ。

 


それにダルメラ皇王とは古き友です。
旧友の願いは優先してあげるのが紳士という者ですよ。

 


じゃあなんだよ、お前は自分が紳士で俺は荒くれ者とでも言いたいのか?

 


仰るとおりです。

 


テメー今度焼いて穴開けてやるから覚悟しろ・・・。

 


はいはい、ケンカはそこまで。
トレイン、バヌー大陸、メイラ皇国まで1日で行ける道を探して。

 


バカか。んな道ねーよ。
この距離だ。軽く見積もっても3,4日はかかるっての。

 


あります。

 


は?

 


1日で行ける道は、あります。
しかし速度も上げるので到着後はしばらく休憩が入りますけど。

 


貴方の休息は着いたらばっちり確保するわ。
その道を教えて。

 


・・・・この大陸をどう横断するってんだよ・・・。

 

 

ゾルダンは地図を睨みつけながらトレインの言う道を探そうとしている。
そこに閃いたかの様に今まで遊んでいたマージが口を開く。

 

 


まさかまさか!
水中トンネル!

 


ご名答です。
流石はマージお嬢様、発想が素晴らしいです。

 


水中だと・・・・・。

 

 

ゾルダンは顔をしかめる。

 

 


水中は解るけど、トンネルなんて掘ったかしら?

 


掘りながら行く!

 


おいバカやめろ!
んな事したら列車が潰れるだろ!!

 


幸いこの大陸の海底は空洞になってるので通過が可能です。
その道で行けば直線で1日で行けるでしょう。
まぁ私の身体に合わず多少揺れるかも知れませんが。

 


ウソだろ・・・おいウソだろ・・・。

 


マージ、全力で行くから今から釜をバンバン炊いちゃって。

 


承知ィ!!

 

 

そう言うとアッシャは操縦室へ、マージは機関室へ向かった。
すると列車は大きく揺れ、外から大きなものが着水した音がした。
そんな中、ゾルダンだけは一人おろおろしていた。

 

 


おいマジでやめろって!
俺ぁ水が大嫌いなんだよ!!

 


ウルサイですよ、ゾルダン。
偉大なドラゴンがこの程度でうろたえてはいけません。

 


頼むから陸を走ってくれーーー!!

 

 

ゾルダンの悲痛な叫びをよそに、列車は海底へと消え、メイラ皇国へ向かった・・。

 

 

続く

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