大魔王編(24)

“己は勇者である前に一人の弱い人間であるということを理解するのだ。”

 

ダルメラの言葉が頭から離れない。
そして、そういえばシルビも言っていた、マリコは弱い、と。

 

翌日、それを胸にしながら、剣の型をし続けた。
己の雑念の正体を知るべく、無心になって・・・。
無心というものが何か分からない、それでも、そのつもりになって、剣を振り続けた。

 

 


貴女は、まだ、雑念だらけですね。

 


・・・そうね。
でも、一つ分かったことがあるの。

 


それはなんですか?

 


私は人の心を理解してなかった・・・。
自分のことばかりだった。

 


それは、何故?

 


勇者であることに、また、拘りすぎていた。

 


その通りですね。
あなたは、人の心を理解していなかった。

 

 

フェルリスは容赦なく、マリコのその言葉を肯定した。

 

 


型を続けるわ・・・。

 

 

雑念がまた、浮かんできた。
マリコは感じ取った。
そう、自分は弱かった。
ダルメラが言っていた通り、プライドばかりが優先されていた。
勇者であるプライドが・・・。
自分の中にあったのは、“誇り”、ではなく、驕り高ぶった“プライド”しかなかった。
人々の苦しみを分かっているつもりなだけだった。
だが、その実、自分の苦しみばかりを憤っていた。
人々の苦しみを蔑ろにしていた。

 

ゆえに、大魔王との戦いに敗れたことも認めなかった・・・。
マリコはそう思った。

 

そう思った、その瞬間・・・

 

 


!!!

 

 

マリコの剣、いや、ミエラの剣が光り輝いた。
マリコを含め、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

 


貴女は、ようやく、負けを認めたのですね・・・。
その剣の輝きが証明している。

 


でも、私は無心なんて理解していない。

 


理解したのです。
認めなさい。
それとも、その剣の輝きを否定するのですか?

 


!!

 

 

そう、剣は光り輝いていた。
何かを訴えかけるように・・・。

 

 


私は・・・弱い。

 


そうですね。

 


一人では何も出来ない。

 


その通りです。

 


それなのに、また、一人でどうにかしようと考えていた・・・。

 


でも、それに気がついた。

 


私は、大魔王に負けたの・・・。
弱かったから・・・。

 

 

涙が出そうになった。
弱いゆえに、負けた。
それは実力差だけではない、心のあり方も原因だった。

 

 


私の力とそのミエラの剣の輝きをの力を使って、全世界の人々の心に訴えかける。
起こった全てを・・・
そして、あなたの言葉を・・・。

 

 

そう言うと、フェルリスの体は光り輝いた。
そしてフェルリスは目を瞑り、まるで瞑想しているかのようになった・・・。

 

 


まずは、私達の戦いの様子の映像を流します。

 

 

そうするとフェルリスの体は更に光を放ち、その光は四方に飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映像が流れる・・・人々の心の中に・・・・・・
マリコ達の魔王との戦いが・・・。
その場にいた戦士たちは驚いた。
だが・・・

 

遠く離れた地の戦士達にも見えた。
その内側から魔王とのマリコ達・・・光の勇者達の戦いが見えた・・・。
その圧倒的なまでの大魔王の力。
濁った光の雨を降らせる大魔王の姿。
そして、マリコの慟哭を・・・・・・。

 

 


何だ、これは!

 


これは、光の勇者と大魔王との戦い・・・?
こんな相手と戦ったのか、光の勇者達は・・・・・・。

 


馬鹿、光の勇者様と呼べ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェルリスは一呼吸をして目を開けた。
人々の声が、フェルリスには聞こえた、驚く様が。

 

 


伝えることに成功しました。
戦いの様子を・・・。
ではマリコ。
今度はあなたの番です。
言葉を・・・皆にあなたの思いを言葉にしなさい・・・。

 

 

マリコは黙って頷いた。

 

 


私たちは大魔王に負けました。
弱かったばかりに。
私は、その心が弱かった。
世界中の人々が戦っていることも忘れ、自分で何とかなると思い上がった。
しかし、私は気がつきました。
大魔王には皆が力を合わせなければ勝てないということに。

 

 

マリコは大きく息を吸った。
人々に届けよう、自分の心の声を。

 

 


皆の力を、貸して下さい。
そうでなければ、私達はまた負けてしまうでしょう。
大魔王は私達の心の弱さを利用し、絶望を与えることで人界を破滅させようとしているのです。
大魔王の目的は全ての破滅。
人界を壊すなら内側からと言っていました。
大魔王の思惑に嵌ってはいけません。
そして、人の心の本当の在り方を大魔王に見せましょう!
決して屈することのない心を・・・!!

 

 

その言葉は、全世界の人々の心に響いた。
あの濁った光の雨は、大魔王の仕業だったのだ。
濁っていたことに、人々は、今気がついた。
そして、恥じた。
信じ続けた存在を、人々を救い続けた存在を否定した己たちの弱さを。

 

歓声が巻き起こった・・・。
世界中から・・・。
あまりの歓声の渦に、マリコ達の元にも歓声が耳に届くほどだった。

 

その瞬間、輝いていた剣が更に輝いた。
あまりにもまぶしい光だった。
そして、それは神々しい光でもあった。

 

その輝いている剣の内側から、何かが出てきた。
揺らめく光る人物が・・・。

 

 


私はミエラです・・・。

 


!!!

 

 

その光の人物は、ミエラと名乗った。
その場全員が息を呑んだ。

 

 


この剣の中で、私は魂となって眠っていました。
私は、今、人々の心の輝きによって眠りから覚めたのです・・・。
人の心は、これほどまでに輝くことが出来るのか・・・。
そう思いました。

 

 

700年前、ミエラは救ったはずの人々に殺された。
存在を否定されて・・・。

 

 


光の勇者マリコ・・・貴女に私の力を貸しましょう。
“賢者”となって貴女の力になります。

 

 

そう言うと、ミエラの剣は光り輝く剣ではなく、光そのものの剣と変わった。

 

 


私は一人では魔王に勝てないことを認められなかった。
ですが、貴女は違う。
強き心で、その事実を認め、世界中の人々と力を合わせる事を決意しました。
それは、私には出来なかったこと・・・。
さあ、戦うのです。
世界中の人々と心をあわせて・・・。

 

 

そう言うとミエラは光の剣へとかえっていった。

 

 


・・・これは。

 


貴女は今、“賢者”の召還に成功したのです。
勇者ミエラ・・・それこそが貴女の“賢者”だったのです・・・。

 

 

続く

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