大魔王編(21)

フェルリスは翌日、マリコを外のなるべく広い場所に連れ出した。
メッルのほとんどが、埋葬された人々の墓で埋まっている。
昨日全員で墓を作ったのだった。

 

 


剣術の基礎の“型”をしなさい。

 


そんなの毎日してるじゃない。

 


ただすれば良いのではありません。
無心にやるのです。

 


無心?

 


雑念を捨て去りひたすら型をし続けるのです。

 

 

そう言われ、マリコは剣術の“型”をした。
見事な動きだった。
毎日の鍛錬の賜物だった。
だが、フェルリスは首を振った。

 

 


誰が、何も考えるな、と言ったのですか。

 


そうしろといったのは誰よ。

 


私は無心になれと言ったのです。

 


???

 


感覚を研ぎ澄ましなさい。
そして、周囲に誰もいなくなったかのように剣を振るい続けるのです。

 


誰もいなくなった???

 


そうです。
シルビの狙撃の方法が、まさにそれですね。

 


俺?

 


そうです。
貴方が一番、この事を理解しやすいでしょう。
敵に当てればいいという考え方で銃を撃ってきましたか?

 


まさか。
当たるか当たらないかなんて考えてたら意味ないぜ。
向こうから勝手に当たるもんだ。

 


そういうことです。

 


シルビ、そうなの?

 


そういうもんだ。
感覚を研ぎ澄ますと、相手が勝手に向こうからやってくるようになるんだよ。
俺の銃弾にな。
そうでなきゃ、皆が打ち合っている最中に銃弾ぶち込めるかってーの。

 


意味わかんない。

 


分かってもらいます。

 

 

確かに、シルビの銃の腕前は尋常ではない。
決して的を外さない。
どんな混戦であっても、まるで無数の針の穴がつながった瞬間を狙ったかのごとく敵を撃ちぬく。
だが、それはシルビの武器が銃であるからそういう技が必用なだけだとマリコは思った。

 

 


私は銃の使い手ではないわ。

 


これはどんな武器・・・魔法にでも言えることなのです。
当てる、という考えだけではだめなのです。

 

 

そう言うとフェルリスはため息を吐いた。

 

 


最初の特訓の時にこれを教えるべきでしたね。
私としたことが失念していました。
目先の強さにこだわってしまった。

 


目先って何よ。

 


言葉の意味、そのままです。
魔王という相手を倒すのにはベルドゥーガ以上に・・・とだけしか私は考えませんでした。
本当に相対すべきは自分自身だったはずでした。

 

 

そう言うと、フェルリスの目は厳しくなった。

 

 


さあ、やって下さい。
雑念を捨てて無心に。
そして、雑念の正体を知るのです。

 

 

マリコはひたすら剣を振るった、見る人を魅了する剣捌きを。
だが、フェルリスは一向に納得しない。

 

 


貴女は雑念だらけです。

 


なにがよ!

 


そういうところがです。
貴女は己の完璧さにうぬぼれている。

 


!!

 

 

自惚れ・・・。
そうだった。
大魔王と戦った時も、弄ばれていることにも気がつかず強くなったとマリコは慢心してしまっていた。

 

 


・・・。

 


・・・分かったみたいですね。
では、続けて下さい。

 


分かったわ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


懐かしい教えだな・・・。

 


懐かしいって、皇王様もそう習ったんですか?

 


ああ、余の剣の指南役にな。
最初のうちは分からないもいものだ。
でも、その言葉を信じればこそ、それは達成できる。
マリコは、ようやくフェルリスの言葉を信じた。
ならば出来よう・・・。

 


なるほど・・・。

 

 

シルビは別段、そうしろと言われたわけではなかった。
戦っているうちに、そうせねば仲間に当たらずにすむ方法を見出せなかったことに気がついたからだった。
そう考えるようになったのは、魔弾なるものを作っていることが大きかった・・・。
仲間にかすりもせずに銃弾を敵に当てる。
それが、自分の絶対的な役割だと考えたからだ。

 

 


俺は雑念のために雑念を捨てるって感じですかね。

 

 

シルビの目は遠かった。
それはシルビらしからぬ表情でダルメラは不思議に思った。
何か苦悩を抱えているふうに見て取れた。
だが、ダルメラは追求しなかった。
内に苦悩を抱えていない者はいない。
おそらく、シルビの銃の腕前は、その苦悩ゆえのものだろうとダルメラは思った。

 

 

続く

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