大魔王編(1)

魔王は去った。
どことも知れずに。
だが、破滅をもたらしにいくのは確かだった。

 

マリコ達はフェルリスと共にルメンシャラの元へ訪れた。
ルメンシャラの周りには黒煙がたちこめている。
おそらく、ここへ来た魔族はルメンシャラが倒したのだろう。

 

 


ついにこの時がやってきたか・・・。

 


ルメンシャラ様、どうかお導きを・・・。

 


それはもう、先ほど自らで決めたではないか。
その道を行くといい。

 

 

フェルリスはマリコを鍛えるといい、皆も己たちを鍛えると誓いあった。
そして、大魔王を絶対に倒す。

 

 


・・・そうでした。

 

 

フェルリスは苦笑した。
今までは、フェルリスは全てをルメンシャラに託していた。
それが、先ほどは自分の意思でマリコを鍛えると言った。

 

 


私は嬉しい、フェルリス。
お前がそこまで信用に値すると思った者達が現れて。
共に戦うがいい。
お前が望むままに・・・。

 


ルメンシャラ様・・・ありがとうございます・・・。

 

 

フェルリスの様子を満足気に見るルメンシャラ。
そして、言った。

 

 


大魔王の復活はすぐに全世界に広まるであろう。
この大陸では、すでに騒ぎになっておる。
光の勇者よ。
まずは、そなたの無事を世界に示すのだ。
希望が残っていることを、示さねばなるまい。

 


分かりました。
必ずや、皆に希望を与えましょう。

 

 

マリコの言葉も・・・その眼も力強かった。
希望を与える、それをすることはマリコ自身の祈りでもある。
ルメンシャラはそんなマリコの様子にうなずいた。

 

 


まずは、すぐそばのリゾッテの首都に行くがよい。
そして、リゾッテ国王に謁見に行くのだ。
先ほど私はリゾッテの国王宛に書簡を届けた。
フェルリスという妖精が共に行くとも書いた。
妖精が共にいる、また、光の勇者には強大な常人でも視える光のオーラがある。
なれば、あの猜疑心の強い国王も認めざるを得ないであろう。

 

 

ルメンシャラは、すでに準備を整えていた。

 

 


さあ、行くがよい・・・。

 

 

マリコ達は頷いた。

 

 

 

*****************

 

 

 

荷物の整理しているとき、マリコは意を決してシルビに話しかけた。

 

 


聞きたいことがあるの・・・。
シルビ、あの銃弾は・・・?

 

 

あまりにも強力だった。
眷属であるベルドゥうーガが苦しみもがくほど。
不思議でたまらなかった。
特殊すぎた、あの銃弾は。
それは全員が思うところであった。

 

 


・・・そうだったな。

 

 

そう言い、苦しそうであり別の感情もあり・・・そんな表情をシルビは見せた。
こんな複雑な感情がこもった表情のシルビをマリコは初めて見た。

 

 


俺はエルダスの魔族討伐部隊で科学班にも所属していた。
マリコには内緒でな。

 

 

それは、リスキン以外全員が驚いた。
シルビがそういうところにいた、その事実は衝撃だった。
そういう場所にいるタイプには見えないからだ。

 

 


そこで俺がいた研究班がしていたのは、より殺傷力の強い魔族専用の銃弾を作り出す研究だった。
通称“魔弾”と呼ばれるものを・・・。
だけど、研究が進むにつれて俺は不安を覚え始めた。
どんどん強力になりすぎている・・・。
だけど、力をつけ始めている魔族達に対抗するためには必要だと思った。
でも、ある時から研究をやめた。

 

 

そのとき、共に研究してた者達は狼狽した。
その研究はシルビの頭脳あっての成果だったからだ。

 

 


俺は怖くなったんだ・・・。
強力すぎる武器は破滅を招くんじゃないかと思った。

 

 

シルビは自分の手を見つめた。

 

 


だけどな、魔王を倒しに行くと決めたときマリコには気がつかれないように少しずつ、また研究を進めた。
魔王を倒すためには強い力が必要だと思ったからだ。
地下都市では研究はまだまだだった。
使い物になる段階じゃあなかった。
こそこそした状態で出来上がるほどの代物じゃねえ。
だけど、メイラでは一人一部屋で見張りもいない。
完成させる格好の機会だった。

 

 

シルビは淡々と語った。

 

 


でも、ダルメラ皇王様の言葉を聞いた。
太古の人間がしでかしたことを。
それで、自分はしてはならないことをしている、そう思った。
これは使わない、配合の紙は燃やした。
とはいっても、俺の脳内には全てが詰まっている。
既に作った弾丸を捨てる度胸はないわ、全ての配合を覚えちまっているわ、そんな自分を呪ったよ。

 


だが、それでも使ったのは皆がシルビ殿を信じたからではないのか?
シルビ殿は自らの作り出した力の危険性を知っている。
そうであるならば、正しく使える。

 


でも、こいつは俺だけの問題じゃねえ。
あのドゥーガとか言う魔族も言っていただろう。
“兵器”だって。
あんな強い魔族を黒煙に変えるような代物だ。
人間だったらかすっただけであの世逝きだ。
研究は俺がいなくても進んでいるんだろうしな・・・。
応用はいくらでもきく。

 

 

その言葉に全員が黙った。

 

 


マリコ、ごめんな。
黙っていて。

 

 

マリコは大きく顔を振った。

 

 


そんなことない!

 

 

マリコは科学班なるものを嫌っていた。
嫌悪すべき対象としていた。
隠したく思うのも無理ない。
そして、それをさせてしまった自分をふがいなく思った。

 

 


気を使わせちゃったわね・・・
ごめんね、シルビ。

 


俺が弱かっただけだ。

 

 

後ろめたいとどこかで思ってたから隠してたのだ。
そうでなかったら、堂々とマリコに言っていたはずだ。

 

 


そんなこと言わないで!
それに、シルビならあの力を正しく使える!

 


さっきの俺の言葉、聞いてなかったのか。
これは、もう、俺だけの問題じゃないんだ。

 


それでも、皆シルビに救われた。
あのベルドゥーガとその側近も倒せたのはシルビのおかげ!
否定しないで、自分を。

 

 

自分を、という言葉にシルビはハッとした。
そう、自分は否定している。
魔弾なる強力な兵器を作り出した自分自身を・・・。

 

 


そうだな、否定してるな、自分を・・・。

 


俺も、自分を否定し続けてきた・・・。

 


・・・。

 

 

それは気がついていたことだった。
リスキンは自分を否定していた。
半分が魔族であること、操られてのこととはいえ非道の数々を行ったこと。

 

だが、最近のリスキンには変化が訪れていた。
嬉しかった、それが。
前を見始めたりスキンが・・・。

 

当初シルビはリスキンを嫌悪していた。
どんな事情があれ、リスキンはマリコを苦しめた。
だが、共に旅をするうちにリスキンに対する嫌悪は少しずつ消えていった。
リスキンの葛藤がシルビの心に変化をもたらした。
リスキンは信用に値する、そう思うようになった。

 

 


自分で言ったろ。
自分だけの問題ではないと・・・。
それは、俺たちも含まれる。

 


え?

 


俺たちはその“魔弾”とやらに救われた。
そして、ここの妖精たちも全滅せずにすんだ。
お前がその力を正しく使った証拠だ。

 

 

リスキンの言葉は力強かった。

 

 


アッシャも言ってたろ。
自分の生み出した力に自信を持て、と。
お前のその力は必要だ。

 

 

その言葉に全員がうなずいた。
そして、フェルリスが口を開いた。

 

 


シルビ、あなたは間違ってない。
その葛藤も。

 

 

フェルリスは思った。
シルビの葛藤は正しい、と。
そんなシルビなら、正しい手段を選べる。

 

 


ありがとうな、皆・・・。

 

 

シルビはどうしても自分の作り出した力を肯定しきれない。
でも、皆の心が嬉しかった。
正しいことに使おう、この力は・・・。
せめて、自分は・・・。

 

 

続く

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