メイラ皇国編(18)

執務室に来たマリコに、ダルメラは意を決して話しかけた。

 

 


光の勇者よ。
民に勇気と希望を与えるために、皆々に言葉を与えてはくれぬか。

 


言葉・・・?

 


民には、そなたの直の言葉が必要だ。
勇士を示してほしい。
光の勇者として。

 

 

ダルメラには、それがマリコの負担になるとはわかってはいた。
しかし、皇王としての責務は果たさねばならない。
自らの肩にはメイラ国民の行く末がかかっている。
世界を救う、すなわちそれはメイラを救うことと同じことなのだというのがダルメラの想いだった。
メイラだけを救おうなどという考えは、ダルメラにはない。

 

光の勇者に世界中の人々が希望を抱く今、マリコ・・・光の勇者の言葉には絶大な効果がある。
マリコの、その圧倒的なまでの意志の強さと眼差しを持ってすれば、その言葉に心を動かされぬ者はいない。

 

 


わかりました。
必ずや、皆に戦う勇気を与えましょう。

 


頼もしい言葉、ありがたく思う。

 


当然のことです。

 

 

マリコは硬く目を瞑った。
そして、足元がすくむのがわかった。
自分がすることの意味に・・・。
だが、逃げることは許されない。
己が決めた道なのだ。

 

希望を与える、それが勇者の証だとガラドゥは言った。
自分が本当に勇者ならば、それができるはずだ。
アッシャは合格だと言った。
だが、それでも自信など正直ない。
それがマリコの本音だった。
だけど・・・。

 

 

 

****************

 

 

 

その頃、メイラの首都ではダルメラの呼びかけに応じて集まった猛者たちや国民が広間に押しかけて来ていた。
マリコの言葉を聞くために・・・。

 

 


どんな女性かしら。

 


女、じゃなくて、女の子だって話だ。

 


そんな!
大丈夫かしら・・・

 


他でもないダルメラ皇王様が認めたお方だ、間違えがあるはずがない。

 

 

女性はその言葉に安堵した。
そうだ、ダルメラが認めたのだ。
あの皇王が間違えをおかすはずがない。

 

 


そうね!
確かにそうだわ!!

 

 

その言葉に水を差すように、とある猛者が口を挟んだ。

 

 


本当にそうなのか~
地下都市なんか作った国の皇王じゃねえか。

 


ダルメラ皇王様が作ったんじゃない!
皇王様を馬鹿にするな!

 


そうよ!
隠さず全部教えてくださったわ、皇王様は!
こんな事を隠さないなんて、さすがダルメラ皇王様だと思ったのよ、私は!

 


ふ~ん。
でも、ガキなんだろ?
しかも女。

 

 

それを近くで聞いた傭兵らしき男が口を開いた。

 

 


俺さあ、エルダスで見たことあるぜ、光の勇者ってガキを。

 

 

傭兵の近くにいた全員が振り向く。

 

 


俺は魔族専用の傭兵をしてるんだけどさ、エルダスの兵と一緒に討伐に行った時に見たよ。
ガキだったけど、怖い女だぜ、ありゃあ。
どんな強い魔物がいても突進して攻めていく。
しかも、強すぎだ、ありゃあ。
ほんと、一瞬で蹴散らしやがる。
勇者だの何だの騒がれるのも無理もないって思った。
見た目で判断すると痛い目見るぜ。

 

その言葉に、傭兵の言葉を聞いた全員が息を呑んだ。

 

 

 

*******************

 

 

 


そう、浮き足立つなって、俺達がついているってな。
何のために俺達が横にいるように言われてるんだ。

 


浮き足立ってなんかないわよ・・・。

 


嘘は疲れるぞ。

 

 

にやりとシルビが笑った。

 

 


なにそれ・・・。

 


シルビ殿の言うとおりだ。
我々がついておる。

 


マリコなら大丈夫だ。

 


そうですわ。
私も、及ばずながら、側にいますとも。

 

 

マリコは心が軽くなるのを感じた。
そうだ、自分は一人じゃない。

 

 

 

*******************

 

 

 

案内された場所には首都を任されているメイラの兵士たちが集まっていた。
メイラ兵士の後ろには、大勢の人々が押し寄せていた。
光の勇者からの直の言葉を聞くために。

 

マリコは一つ上の段に立たされた。
その横には、マリコと共に戦ってきた仲間としてシルビ達が立っている。

 

マリコの姿を見て、人々は驚いた。
少女だとは聞いていたが、あまりにも小柄だった。
とてもじゃないが一瞬で魔族たちを蹴散らすとは思えない。
だが・・・威風堂々と立っている、そのような少女が。
人を圧倒する何かを持っていた。

 

マリコは覚悟した。
言わねばならない、自分の想いを、祈りを。
そして、語り始めた。
その眼には強い光が宿っていた。
覚悟の光だった・・・。

 

 


皆々方。
魔王は強大です。
その証拠に、完全には封印は解かれていないのに魔物も魔族もその力は強まる一方です。
世界中がその力で圧倒されつつあり、混乱は増すばかりです。

 

 

人々は息を呑んでマリコの言葉に耳を傾けていた。

 

 


しかし、絶望する必要はありません。
立ち向かう者がいる限り魔王は倒される運命にあるからです。
その証拠に、人々の心が絶望に支されていた700年前、どんな状況下にあろうとも絶望しなかった当時の勇者たちは魔王の封印することに成功したのです。

 

 

その場にいた者達は、マリコの其の眼の輝きに、言葉の意味に、心を奪われた。
そうだ、成功したではないか。
700年前、当時の勇者たちは魔王を封印することに。

 

 


絶望しなければ立ち向かえる相手なのです。
当時の世界が滅びたのは、絶望した者があまりにも多かったからです。
それゆえに魔王を倒す前に世界を壊してしまったのです。
絶望するばかりだった為に。

 

 

マリコは強く語った。
自らの願いを。

 

 


多くの人々が希望を胸に立ち向かえば、滅びは訪れません。
証拠はもう、すでに用意されているのです。
戦いましょう、皆で。
そして、荒廃を食い止めましょう。
諦めてはなりません、何が降りかかろうとも。
皆で魔王を倒すのです。
皆、力を合わせましょう!

 

 

最後の言葉が終わった瞬間、その場に歓声が沸き起こった。
口々に言った。
そうだ戦おう、光の勇者様と共に・・・と。

 

皆の目には強い希望の光が宿っていた。
特にメイラの人々の眼は、マリコが言葉を投げる前とは明らかに違っていた。
皆、どこか虚ろだった。
無理もない、今のメイラは魔族以外にも地下都市の件で相当な混乱を背負っている。
だが、今は違っていた。
マリコが驚くほど、その表情には希望に満ち溢れていた。

 

届いた・・・自分の言葉が・・・。
そして、皆の希望に満ちた表情を見て思った。
己は勇者なのだと。

 

マリコの、言葉を発する前と後との、眼の輝きの違いにシルビはにっと笑った。

 

 


やりゃあ出来るじゃねえか、マリコ。

 


うむ。

 


マリコだからな。

 


すばらしいですわ。

 

 

そんな中、エルダは呟いた。
微笑みながら。

 

 


勇者の誕生・・・ですね。

 

 

続く

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