メイラ皇国編(15)

一同はアッシャに言われてバルコニーに集り少しの時間が過ぎていた。
そこにはダルメラも一緒に居た。

 

 


は~い皆さんお待たせしました~。

 


お話とは何でしょうか?

 

 

アッシャは解ってるという素振りを手でするとバルコニーの縁に腰をかける。

 

 


皇王様はもう皆に昔話はしたよね?

 


知っている限り、全て話した。

 


そう、それなら話が早いわね。

 

 

そう言うとアッシャは空に向かって手を広げる。
すると空がまるで古いフィルムの様な映像で包まれる。

 

 


な、なんだこりゃ?
随分と古い景色だなこの映像・・。

 


少なくとも数十年前という訳ではなさそうだ。

 


この景色は・・・・。

 

アッシャが映し出した映像にリスキンは妙な見覚えのある感覚が過ぎった。

 

すると

 

 


・・・・・?
皆さん一体何の話をしているんですか?
私には夜空しか見えませんが・・。

 


・・・。
余にも皆の言う古い景色というのは見えていない。

 

 

映像が見えている者達はその言葉に驚く。

 

 


・・ムダよ。
今私が映し出す絵が見えるのは“天啓”によって選ばれた者達だけだから。

 


天啓・・・・。

 

 

エルダはその言葉を聞いて何かに納得したかの様に心の中で頷く。
ダルメラは全てをわかっている風であった。

 

 


ダルメラ皇王、お話があります。
よければこちらで・・。

 


ああ・・・解った。

 

 

エルダは頭を下げるとダルメラと一緒に宮殿の中へと戻っていった。

 

 


それで、この景色の何が凄いの?
”天啓”って何?

 


焦らない焦らない♪
今からあなた達が知るべき事が見えるから。

 

 

そういう映像は切り替わり、広大な戦場の様な光景が映し出された。
そこには大きな影に立ち向かう4人の姿とその後ろに8つの人影があった。

 

 


これって!!

 


・・・・700年前の勇者達・・!?

 


・・・・。

 

 

その映像は古く、殆どの人物はかすれて見えなかった。

 

 


これはダルメラの言っていた“無くされた歴史”の一部よ。
本当は4人じゃない。勇者とそれぞれの属性を持つ賢者8人。
その他にも魔法使いや戦士たち、数多くの志を共にした皆が居たわ。
そしてこの力を持って魔王は封印された・・・いえ、封印が限界だった。
魔王が放った魔物を倒すために皆必死だったからね・・。

 

 

映像は長い戦いの末、黒い影を抑えこみ封印した所で止まった。

 

 


なぁどうしてアンタがこんな物を・・・

 


待って。
まだ続きがあるの。

 

 

アッシャがシルビの話を止めて映像が早く流れ、情景は一変する。

 

 


こ・・これは一体!?

 


・・・人々が勇者たちを襲ってる・・・。

 

 

マリコはそう言いながらもダルメラの話と受け取った剣を思い出した。

 

“人類の滅びを一歩手前で救った勇者から、奪ったのだ。
功績をも封じて・・・。”

 

そうすると映像から突然声が聞こえてきた。

 

 


“どうしてです!私たちは民の味方です!攻撃しないで下さい!”

 


“黙れ!魔王が封印された今、この世は平和になった!
もう勇者なぞ必要ない!勇者が居るから悪が生まれるのだ!”

 


“それは違います!私達は再び復活するかもしれない魔の手から民を・・・!”

 

 

だが勇者ミエラの言葉よりも大勢の民の剣が勇者の身体を貫いた。
それは先ほど戦いを友にした多くの戦士たちの姿もあった・・。

 

 


なんてこと・・・・

 


“賢者だ!賢者も勇者と同じだ!皆殺しにしろ!”

 


酷すぎる・・・人間のする事じゃねぇ・・・。

 

 

シルビは顔を背けたい気持ちを堪えてその場面を見ていた。
すると、そこには驚く存在が映っていた・・・。

 

 


“私は光の賢者ヘルガであるぞ!何故私を攻撃する!”

 


!!!!!!!

 


“光があるから闇が生まれるのだ!もうこの世に光の存在は必要ない!”

 


“・・・それ以上攻撃の意志を見せるならこちらも力を使うぞ・・・”

 


“平和な民を攻撃するつもりかこの悪魔め!殺せ!殺せ!!”

 

 

飛び掛るように大勢の民がヘルガに襲い掛かる。
だがヘルガは押し寄せる人の波を吹き飛ばす攻撃が精一杯だった。
魔王との戦いにで疲弊していた為に・・・。

 

 


“・・・何故だ。何故我々と人々が争わねばならんのだ・・!”

 


“今だ!放て!!”

 


“!?”

 

 

不意を突かれたヘルガの身体に何本もの矢が刺さる

 

 


“うぐ!?
こ・・・この力は・・・・闇!?”

 

 

ヘルガが矢を自らの身体から引き抜くとそこには魔物の鋭い爪が先端に括られていた。

 

 


“ぐ!!・・・おのれ・・魔族よりも醜い者共め!!
それが世界を救ったものに対する仕打ちか!”

 


“勇者は要らない!賢者も、光も必要ない!死んで償え!”

 

 

雨の様な矢がヘルガの頭上に降り注がれる。

 

 


“この・・・悪魔め!!地上に巣食う悪魔どもめ!!
この恨み・・必ずや貴様達醜い人間に返してやる!!!”

 

 

ヘルガはそう言い残すと矢の雨に撃たれ、光の粒となって消えてしまった。

 

 


“これで光は死んだ。だが勇者の仲間、賢者は一人残らず殺せ!”

 

 

映像はそこで一旦ノイズのように走って止まる。

 

 


これが話の続き。
・・・この紛争によって人間は光の希望を自ら消してしまったわ・・。

 


なんであいつが・・・。

 


ヘルガは・・彼女は元々光の魔法使いであり、賢者になった。
だけど死後の魂は闇に捕まり、憎しみと悲しみを拠り代に蘇生されたわ。
・・・人間を憎みその人間を消す為の存在、魔王を復活させる忠実な眷族としてね。

 

 


・・・・。

 

 

マリコとシルビは複雑な気持ちを抱いていた。
ヘルガがあそこまで残酷で残虐な行為を愉しんでいた理由。
それは人間によって曲げられた憎しみと悲しみの具現化だったと言う事を知って・・。
無論、だからと言ってヘルガを許すわけではない。
だが・・・同じような事になった時、自分は人々を許せるのだろうか。

 

 


ねぇ・・・・ガラドゥ・・・。

 

 

マリコは力の無い声でガラドゥを呼ぶ。

 

 


マリコ殿、我々の行いは間違ってなどいない。
どんな過去があれ、禁忌を起こした者が裁かれるのは当然だ。
己の行動に迷いを生じさせるな。

 


・・・・。

 

ガラドゥの言葉にシルビは小さく頷いた・・。

 

 


何で皆、こんなことを・・・。

 


恐れたの。

 


皇王様が言っていた、己らの罪がばれることをか?

 


いいえ、それだけじゃないわ。
彼らはミエラや賢者達の力の矛先が自分たちに向かうのを恐れたの。

 


どうなったらそんな思考にいたるんだよ。

 


どういう思いで彼らが戦ってたか、何も知らなかったから・・・。
自分たちと同じ人種だと思ってしまったから・・・
いずれ自分たちに牙をむいてしまったらと、恐怖を抱いてしまったの。
何っていっても当時の最新兵器も効かなかった大魔王を封じたからね、ミエラや賢者達は。

 

 

そう会話しているうちにリスキンが口を開いた。

 

 


アッシャ・・と言ったな。
そろそろ聞かせてくれないか。
何故アンタがこの事を知っているんだ。

 

 

リスキンの言葉にアッシャは眼を閉じて口を開く。

 

 


・・・・・。
この魔王封印の時に炎の賢者として戦ったのは私よ。
そしてこの出来事の大半を焼き払ったのも私。
そして美談を書き・・この世に広めたわ。

 


!!!!!!!

 

 

其れにはその場全員が驚いた。

 

 


焼いて、美談を・・・
それも・・・さっきの“天啓”ってやつか?

 

 

アッシャは首を振る。

 

 


天啓はこの後授かったわ。
多くの民にはこの事実を伏せ美談を・・・。
そして、いずれ現れる勇者と強き志を持つ者だけに真実を、てね。

 

 

その言葉に一同は同じ事を考えた。
アッシャの“天啓”は誰かの意志によって与えられている。
そしての与えた者は自分たちにそれを見させた・・・。

 

 


しかし魔王と戦うと言っても賢者は・・・・・アッシャ殿だけではないか。

 


大丈夫よ、そこは彼女が切り開いてくれる。

 

 

アッシャはマリコを見る。

 

 


え、私・・・?

 


ダルメラが集めてくれる各大陸の皆を・・・あなたの志で1つにするのよ。
かつての勇者は皆を集めようとはしなかった。
魔王を封印した後で・・・と。
それが最悪の結果を招いてしまった。
だからあなたには・・・同じ過ちを繰り返さないでほしい。

 

 

アッシャの真っ直ぐな眼にマリコは頷く。

 

 


でも・・皆をまとめるなんて・・・。

 

 

マリコはシルビを見る。
戦場に赴く時、皆を奮起させるのはシルビの得意技と言ってもいい。
なのに、自分が・・・。
だが、シルビはマリコの頭にポン、とやさしく手を置く。

 

 


今回ばかりは勇者様の声が必要だ。
でも安心しな、お前の後ろにはずっと居てやる。
だから自信を持って皆の前に立て。

 

 

シルビの声にガラドゥ、リスキン、ミランヌも頷き、優しくマリコを見る。

 

 


皆・・・。

 


決意は固まったみたいね。

 


ええ、もう逃げない・・あんな事絶対繰り返させない。

 

 

マリコの力強い言葉にアッシャは笑顔になる。

 

 


流石は光の勇者様ね。
それじゃあ・・・最後の“天啓”を与えるわ。

 

 

全員は頷く。
するとそれと同時にアッシャは自分と全員を何処かへ飛ばしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして誰も居なくなったバルコニーを見つつ、話すものが居た。


ダルメラ皇王・・この世を救えるのは今回が最後かも知れません。

 

 


・・・そうかも知れぬな。
だが、何故だろうな・・今の余に不安という気持ちは無い。

 

 

ダルメラは落ち着いた表情で言う。
ダルメラは地下都市のことも太古の非道のことも知らなかった。
しかし、アッシャが何者かは知っていた。
天啓が彼女を縛っていることも。

 

皇太子時代にアッシャは”あなたが、この者は、という人がいたら私を呼んでね”・・・とダルメラに言った。
アッシャの目を見て、アッシャが語ったことは真実であるということをダルメラにはわかった。
そして、幾度となく”この者たちなら”と思いった者たちが現れたらアッシャを呼んだ。
それらの者たちは全て天啓が下った。
しかし、誰もあのバルコニーから戻ってきたものはいなかった。

 

いつも、この者たちこそ、と思っても不安があった。
だが今はない。

 

 


あの者達ならやってくれる。
今まで見た仲間という物で最も強い団結力を感じる。
それにマリコならきっと・・・いや必ず皆を纏められる力を持っている。

 


流石ですね、人を見抜く力を持つ素晴らしきお方だ。

 


余が惚れた女であるからな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリコ達は何もない真っ黒な場所に連れて来られていた。

 

 


こ・・・ここは?

 


ここは~私が魔法のマジックを練習する特別な練習場で~す♪

 

 

そう言うと全員の周りに火柱が吹き出し、炎で作られた空間が出来上がる。

 

 


!!
アッシャ殿・・・何をするつもりだ。

 

 

ガラドゥの声にはっとし、全員は臨戦態勢を取る。
そんなガラドゥに対してアッシャはサーカスの時と同じような声で喋る

 

 


最後の天啓、それは“あなた達の力が本物か試せ”で~す☆
なのでー、あなた達1人でも私に血を流させたらあなた達の勝ち!
でも、あなた達全員が動けなくなって3秒経ったら~・・・

 

 

次の瞬間、アッシャは全員に鋭い視線を向ける

 

 


勇者じゃないって事で全員この場で灰になってもらうわ。

 


!!!

 

 

その時、マリコ達は自分たちの周りにある積もったような灰に目が行った。

 

 


まさかこの灰は・・・・

 


ここの試練で“勇者失格”となった者達か・・。

 


なるほど・・・。
貴女に勝てなきゃ魔王に戦う資格もないって事なのね。

 

 

マリコは死が直面してるのを知りつつもその心は自信に満ち溢れていた。
そう、こんな場所でやられる訳には行かない。
真っ直ぐな意志を全身に込め、アッシャを睨みつける。
その目線にアッシャはようやく満足したような笑みを向ける。

 

 


私の名は大火炎の賢者アッシャ。
聖なる天啓の元に今からあなた達を全力を持って試します。
・・・手加減は出来ないからね?♪

 


臨む所よ!

 

 

マリコ達はアッシャとの戦闘に入った・・・。

 

 

続く

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