メイラ皇国編(7)

リスキンは地下都市についてダルメラに話しがあると、そして、できるなら二人で話したいことがあるとリビルにこっそり伝えた。
リスキンが地下都市の人間であることは伝えてはあったが、彼が“スニーク”である事は言ってはいなかった。
さすがに、大勢の人間の目があるところで自分の正体をばらすのがどういうことかわかっているので言うわけにはいかない。
だが、伝えねばなるまい。
あの皇王には。

 

皇王はメイラの罪を自ら暴き、国民に、そのほとんどを公開してある。
なのに自分だけが黙っているなど許されない。

 

 


・・・分かりました。
伝えておきましょう。
地下都市との事となれば、陛下もお会いになるでしょう。

 


ありがとうございます・・・。

 

 

リビルは最初にリスキンを見たときから、その濃い影を感じ取っていた。
そして、彼が地下都市の人間だと知って、罪悪感がこみ上げていった。
その彼がダルメラと二人っきりで話したい・・・それは何を意味するのか・・・・・・。

 

リビルはすぐにダルメラに伝えた。
ダルメラは政務に励んでいたときだった。

 

 


・・・そうか。
今日の夕餉の後、時間をとろう。
夕餉を食べ終えたら余の執務室に来るよう、そのようにリスキンに伝えてくれ。

 


はっ・・・。

 

 

 

***********

 

 

 


では、話とはなんだ?

 


スニークという者についてです。
知っておられるかとは思います・・・。

 


ああ、眷属ヘルガの側近で逃げる奴隷を殺す役割を担っていた者か・・・。
恐ろしく強い男だったと聞いているな。
光の勇者・・・マリコ達が現れるまでそやつに勝ったものなどおらぬという話だ。
どんな猛者も・・・。

 


俺です。

 


何?

 


スニークは俺です。

 

 

さすがのダルメラも驚きを隠せなかった。

 

 


それはどういう・・・。

 

 

リスキンは全てを話した。
己の血の半分は魔族だということも。

 

 


・・・そうだったのか。
そなたは生き証人というわけか、メイラの罪の。

 

 

ダルメラは強く眼を瞑った。
何かを考えているようであった。

 

 


しかし、何故、余に話した?
黙っていても差し支えのないことだったはず。
そなたはヘルガから解放されたのだからな。
もう、スニークという者は死んだのだ。

 


・・・。
死んでいません・・・。
スニークは俺です。
皇王様は、メイラの、当時の世界の罪を全て仰った。
俺だけ自分の罪を隠し通すなど許されません。

 


罪・・・か。
そなたは己に罪があるという、何故そう思う?
罪の逃げ道はいくらでもあるはずだ。
そなたはメイラの被害者。
囚われの身になってなければ、ヘルガに操られなかった。
メイラとヘルガに罪を押し付けることなどいくらでも可能だったはずだ。

 


皇王様が自ら仰ってたではありませんか。
何も知らなくとも、悪だ・・・と。
しかも、俺は善悪やヘルガと戦う前までの記憶を消されただけに過ぎません。
自我もあったしスニークであった頃の記憶もきちんとあります。

 


なるほど・・・。

 


皆が俺に罪はないという。
俺の罪を許さなかったのはシルビだけでした。
だけど、今では、そのシルビすら俺を許している・・・。

 


確かに、そなたに罪はある。
どんな事情があろうとも・・・ヘルガの元、多くの残虐な行為をしてきた罪がな・・・。

 


・・・。

 


しかしな、何故己が許されたか、そなたは分かっていない。

 


・・・え?

 


そなたが逃げなかったからだ。
罪を、背負った。
しかも、最初に意識を取り戻した直後から、な。

 


俺に罪があることを理解するのは・・・善悪を分かるようになれば、当然です・・・。

 


その当然が、出来ぬのだよ。

 


 


言ったであろう、大魔王を倒すためと言いその場にいた人々を吹き飛ばした連中は、仕方がないことだと言い訳し続けた、と。
皆、逃げ道が少しでもあるなら、逃げたいのだ。
その重さから。
そなたの罪は、重い。
あまりにもな。
だが、そなたはその重さから逃げていない。
いくらでも逃げ道は用意されているというのに。

 


逃げ道など・・・ないです・・・。

 

 

ダルメラはそんな様子のリスキンに苦笑した。

 

 


そなたがそうであるから、そなたの仲間たちはそなたを信用に値する者だと思ったのだ。
なあ、リスキン。
そなたは何故戦おうと思った。

 


償いです・・・。
死んでも購えない罪なら、戦って全てを終わらせる。
それだけです・・・。
でも、それでも罪は消えませんが。

 


そうだな・・・。
消せぬな・・・。
だが、消えない罪を背負っても、なお、死ではなく戦って購う道を選んだ。
それは、勇気あることだ。

 


・・・そうしろ、といったのはマリコです。
俺が選んだのではありません。

 


そうか、マリコが・・・。
でも、選んだのは、他でもないそなただ。
マリコは選択肢を増やしたに過ぎない。
どんなことをしても消せないと思っていながら生きて償う道を選んだのは他でもないそなた自身だ。
それは尊いことだ。
忘れるな。
そなたの選んだ道は正しい。

 


・・・。

 

 

リスキンには罪があると言ったダルメラの言葉に心が軽くなるのを感じた。
そして、その購う道が正しいという言葉にも・・・。

 

 

続く

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