エルフ村編(15)

マリコ達は森の中を歩きながらリスキンからアルテメシアの部下の話を聞いていた。

 

 


あのカトゥーナっていうヤツはどう倒せばいいの?

 


確かにそれは俺も知りたいな。

 

 

その質問に対してリスキンは少し間を空けてから、口を開いた

 

 


・・・・・・俺の知る限りでは奴を倒す方法は知らない。
いや、倒せない。

 


はぁ!?

 


倒せない・・と言うのは物理的に撃退が不可能と言う事か?

 


ああ。
ヤツは食った物を自分の肉体にして再生している。
完全に倒すにはヤツの今まで食った分を全て使い切らせないとムリだ。
その上あの様に全身を切り離しても生きてる。
長期戦に持ち込まれれば持ち込まれるほど不利なのは間違いない。

 


切り離した上に再生・・ってコトは粉々にしないといけねえじゃねえか・・・

 


しかし手足を封じれば再生するまでの時間は稼げるのではないのでしょうか。

 


いや、カトゥーナの再生力は異常だ。
ヤツは他の魔族とは違い骨も食う。
手足の骨もとろとも粉々にしても1秒と無いうちに再生するだろう。

 


何よそれ・・そんな力持っててなんでアルテメシアの部下なのよ。

 

 

マリコの不満の声にリスキンが少し考える。

 

 


俺もそこは気がかりだ。
魔族を討伐しに来た軍勢を1人で片付けたという話も聞いたことがある。
それほどの力を持つなら本来なら眷族レベルの上級魔族になれる筈だから。
だからどこかに弱点がある筈なんだが・・・。

 


ヤツの食うスピードは尋常じゃなかったぜ。
俺の腕をチーズ同然みたいに食いやがったからな・・。

 

 

シルビの苦虫を噛み潰したような声にしばしの沈黙が広がる。

 

 


む・・?

 

 

ガラドゥは歩いている方向とは違う方角を見つめて足を止める

 

 


どうかしました?

 


向こうの一帯はキレイに草木が刈られている。
何かの儀式にでも使う広場か?

 


いえ、私達はそのような場所を作った記憶はありませんが・・・。

 


怪しいな。

 


行ってみましょう。
私も少々気になります。

 

 

一同な頷いてあたり一面、まっさらな場所に出る。

 

 


ねえシルビ、この跡・・・・

 

 

マリコは周囲の木の傷を見て言い、シルビも納得した顔をする。

 

 


違いねー・・・こりゃ“食われた跡”だ

 

 

全員がその一言で身構える

 

 


近くにエルフでない者の気配を感じます。
・・・まだ近くに居る。

 


カトゥーナだな・・・。
あいつは何でも食うからな。
奴の食い散らかした後だ。

 


何処から来る・・・。

 

 

・・・が、カトゥーナが現れる気配は一向にないまま数分が経過した。

 

 


集中力を欠かせる作戦か・・・?

 


あいつは、そんな脳みそは持っていない。

 


もう!
隠れてないで出てきなさい!
このご飯怪獣!!!!!

 


バカ!
敵相手に煽ってどうする!

 

 

マリコの大声で少し遠くで物音がし、何かが目の前に飛び出してきた。

 

 


へへーん!猫缶はもう食べちゃったよーん!
残念でしたドゥ~・・・て、あれ?

 

 

カトゥーナは目の前に居るマリコ達を見て目を丸くする。
だが、次の瞬間目を輝かせて臨戦態勢を取る。

 

 


あ、さっきの人間!
嬉しい!猫缶だけじゃ全然お腹いっぱいにならなかったの!

 


そうそうカンタンに食われてたまるかっての!

 


気をつけろ、下手に攻撃すると分裂するぞ。

 


言われなくたって!

 


へへーん、ならそのお兄ちゃんから貰ったもの、見せてあげる!

 

 

カトゥーナはそう言ってシルビを指差しながら構える

 

 


ばん!

 

 

カトゥーナの声と同時に何かがシルビ目掛けて飛んできたが、寸前でガラドゥがそれを握りつぶす

 

 


これは・・ヤツの指か!?

 


げ!
まさか俺の腕食って銃撃を覚えたってのかよ!?

 


アルテメシアもその部下も喰った者の能力を吸収するからな・・・。

 


さぁ撃つぞ撃つぞー!
ばんばんばん!!

 


そうはさせません!

 

 

ヴァムは飛んでくる指の銃弾を一撃でなぎ払い消し飛ばす。

 

 


もー!!ちょっとは痛がってよー!
でないと食べる時面白くないー!

 


ふざけてた事言ってんじゃないわよ!

 

 

マリコとリスキンも応戦しながら、マリコは1つだけ希望が浮かんでいた。
このままカトゥーナが打ち続ければ、再生は追いつかなくなるのでは・・・と
だが、リスキンは顔を曇らせていた。

 

 


ずいぶん楽しそうだな。

 


そういえば、スニークいたんだっけ♪
スニークにだけ教えたげる。
私のこのテッポーは今日1日打ち続けても私は死なないよーだ♪

 


だろうな。

 

 

冷静に応戦しつつも、カトゥーナの言葉にリスキンは深く自責していた。
リスキンが地下都市から逃げようとした者を斬った後の死体は全部カトゥーナが食ってたという噂を聞いていた。
少なくとも自分達を殺すだけなら十分すぎる量なはずだとリスキンは思った。

 

 


なら、これならどうよ!

 

 

一瞬のスキを見せたカトゥーナの顔面めがけて剣を突き刺した

 

 


やったか!?

 


はっずれー♪

 


!!!

 

 

全く攻撃が効いてない事を察知してカトゥーナを蹴り飛ばして剣を抜くマリコ

 

 


へへーん、そんなの痛くもかゆくもないよーだ!

 


ゾンビなら顔が弱点なハズでしょ!

 


ソンビって言うなー!
私は好き嫌いしない女の子だー!

 

 

その時、

 

 


スキあり!

 


ぐっ!

 

 

ガラドゥの足を指の銃弾が貫いた

 

 


おっさん!

 


私にお任せ下さい。

 

 

ミランヌ治癒魔法でガラドゥの怪我はすぐに回復した。

 

 


あーもー!
その赤い女エルフ邪魔ーー!!

 

 

カトゥーナは不満を顔に出してミランヌを邪見する。

 

 


アルテメシア様はアンタを欲しがったけど、私は要らない!
もーアンタなんか死んじゃえー!!

 

 

カトゥーナは腕全体を破裂させて銃弾の雨を一斉に降らせる。

 

 


この量・・・反則!!!

 


皆、防御しろ!

 


ビッグプラントスラッシュ!

 

 

ヴァムの必殺の魔法が銃弾の多くを消すが、それでも全員が無傷とは行かなかった。

 

 


ちっくしょー・・・こりゃ痛ぇな。

 


あれあれ?
お兄ちゃん腕生えてるねー、また食べてあげる!

 


シルビ!

 


!!!

 

 

速攻で飛び掛ってくるカトゥーナに、ダメージを受けてシルビは殆ど動けなかった。
だが・・

 

 


見つけたにゃカトゥーナァァァァァァ!!!

 

 

ドゥの一撃がカトゥーナの顔を引っかく

 

 


いったぁぁぁぁぁぁい!!!
何するのよドゥ!

 


!?

 


うるさいニャ!
お前は私の猫缶を盗んで食った罪で死刑だにゃ!

 


あーもー!
私のランチタイムを邪魔しないでよー!
・・・えいえい!

 


はっ!
にゃ・・・にゃーーん!!

 

 

ドゥは飛んでいくカトゥーナの指の銃弾を追いかけて走り去ってしまった。

 

 


いたた・・・

 

 

カトゥーナのそのしぐさにシルビとガラドゥは何かを感じ取っていた。

 

 


おっさん・・・

 


うむ・・・。
ヤツな何故かダメージを受けたな・・。
我らの攻撃な何一つきかなかったというのに。

 

 

防御体制をとりつつ、ミランヌの回復を受けながら2人は小声で確認していた。

 

 


さ~て、次こそ食べてあげる!
いただきますお兄ちゃーーん!

 


ちくしょう!!

 

 

シルビもダメージの所為で思うように銃が構えられず、間に合わないと焦っていた。
だが・・・

 

 


うぐっ!!!!

 


お前!?

 

 

だが、カトゥーナが飛び掛る瞬間、リスキンが盾となりシルビを防ぎ、
剣でカトゥーナの胴体を真下から突き刺して動きを止めていた。

 


リスキン!

 


ここは俺が食い止める!
仲間を回復してやってくれ!

 

 

リスキンの怒号にミランヌは慌てながらも頷き、回復に専念する

 

 


スニークか~。
一度食べてみたかったんだぁぁ!

 

 

カトゥーナはそのままリスキンの肩を噛み砕く

 

 


ぐあぁぁ!!

 

 

ダメージを受けながらもリスキンは必死でこらえつつ、自分を責めていた。

 

自分は魔族の連中の情報を持つだけで何もできない・・・。
いや、そもそも何か出来ると思っていたのだろうか?
ヘルガに操られ、人の心を壊し、支配しされていた。
その中で自分のしてきたこと・・・。
自分は数多くの絶望を与え続けていた存在でしかない。
・・・死で償えるならそれは今かも知れない。
だが・・俺が死ぬ前に、せめてこの状況・・いや、カトゥーナを倒したい。
仲間として受けれてくれた皆を・・・今だけでも己の手で守りたい。
・・・・・・・自分にもっと力があれば・・倒せたのだろうか。

 

リスキンの思考はそこで停止し、意識は消えていった。

 

だが、リスキンの意識とは別に、肉体は違っていた。

 

 


ウウウ・・・・!!

 

 

リスキンは噛み砕かれた肩の痛みをもろともせずカトゥーナの顔を自分の肩から引き離す。
それも恐ろしい力で・・。

 

 


ほえぇぇぇ!?
こ・・・この力ってまさか!

 


リスキン!

 


おい!
大丈夫か!?

 

 

仲間の呼びかけに応じる様子も無く、リスキンは攻撃へと転じようとする。

 

 


あの力は・・・!

 

 

ガラドゥはそのリスキンから見える力に見覚えがあった。
それは地下都市で見た敵、BNK3Rに似た“闇のオーラ”だった。
人間の属性オーラと闇のオーラが合わさった形・・・。
だが、リスキンから出るその力は純粋な闇に近い物をガラドゥは感じた。

 

 


お前を・・・・倒す!!

 


ぎょ!!

 

 

リスキンはカトゥーナに突き刺していた剣を引き抜き、カトゥーナの顔目掛けて突き刺す。

 

 


ぎょぼっ!!!!

 


ダメージが効いてるようだな・・・。
なるほど・・・お前の弱点は闇の力か。
ならば・・・!!

 

 

リスキンはそのまま剣を押し込み、カトゥーナの顔面を砕く。

 

 


これは撃たれたお返しだ。
最後に貰っときな。

 

 

リスキンは黒いオーラを放つ銃を取り出しカトゥーナに撃ち込んだ

 

 


お・・・お腹減ったまま・・・死にたくな・・・ぃ

 

 

カトゥーナは弱弱しくふらつき、黒い煙となって消えた。

 

 


・・・死んだか。

 


・・・おい・・・大丈夫か、リスキン?

 

 

少しの沈黙を置き、シルビがぼそっと問いかける。

 

 


・・・・・あ・・・?

リスキンの返事に力が抜けてしまったシルビ。


あ?じゃねーよ。
なんなんだよ、あの力は。
カトゥーナを簡単にやっつけちまったじゃねーか。

 

 

シルビの言葉にリスキンは困ったような顔をする。

 

 


俺が・・・・いや・・・・何故、俺が倒せた・・・・覚えてないんだ。

 


リスキン!
貴方肩が・・・・・?

 

 

慌ててミランヌが駆け寄るが、噛み砕かれた筈のリスキンの肩は無傷だった。
いや、“再生”していた。

 

 


・・・。

 

 

ガラドゥは思った。
あの力はリスキンの中にある魔族の血が暴走したのだろう、と。
それが、リスキンが持つ真の力の姿なのだと。
肩の傷が”再生”したのも、闇の力で人間の代謝が異常に発達したからかもしれない。
だが、魔族を忌み嫌う彼にはその自分の力の正体が解っていないのだろう。

 

 


とにかく、倒してくれてありがとリスキン。
これでウザい魔族が1人減ったから行動はしやすい筈よ。

 


まだ皆さんも十分に回復出来ていません。
しばらくここで落ち着きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


リスキン殿、先ほどの力は・・・内なる闇のパワーか?

 


・・・・・解らない。
ヤツに噛まれて死を覚悟したが・・・そこから記憶がない。
もし俺が闇の力を使って倒したなら記憶が無くて幸運なのかも知れないがな・・。
皆が気が付かなかったのは・・・俺の闇のオーラが人間のオーラと混じってたからだろな。
運がいい・・・。

 


何を言う、その力を正しく使えば魔族からここを救う大きな力となる。
自分の力に否定的にならず受け止めてはどうだ。

 

 

ガラドゥの案にリスキンはゆっくり首を振る。

 

 


皆を救えた事は素直に安心しているが、俺自身はこの力は使いたくない。
魔族は俺が忌むべき存在だ。
たとえ俺の力の根源がそうであったとしてもな。

 


・・・・・・。

 

 

ガラドゥはそれ以上はリスキンに声はかけず、優しくリスキンの肩を叩いた。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかあのカトゥーナがやられるなんて・・・!
猫缶を盗まれたのは許せないけど、死んでほしいヤツでは無かったにゃ・・。
一刻も早くアルテメシア様に知らせないと・・・!!

 

 

カトゥーナを倒したその瞬間を、影から見ていたドゥが慌てて逃げいくのと、誰も気づかなかった。

 

 

続く

ブログランキング・にほんブログ村へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。