地下都市編(19)

騒動のざわつきが収まりつつある外を眺めながらガラドゥは牢獄で冷静に考えていた。

 

 


もはや、ここで無為に時間をつぶすわけにはいかん・・・。
だが、まずはここから出るとしても我の力でこじ開ける事は不可能に近いか・・・。

 

 

外の様子を伺いながらガラドゥは格子や壁を触り、破壊できるかを模索していた。
壁を手に持つ斧や手のクローの先で削ってみるが、削れた石は瞬時に壁にくっ付き何事も無かったかのように“壁の一部”として元に戻った。
おそらく、この牢獄全体は力づくでは突破できない魔法が張り巡らされているのだと。

 

 


なるほど、無駄だから武器は奪わなかったのか。
いや、マリコ殿とてさすがに素手でヘルガと戦ったのではないだろう・・・。
・・・。
ヘルガのことだ。
脱獄しようとする様を見て楽しむ為なのかも知れんな。

 

 

そう思案しながら、ガラドゥは腰をあげ少し遠くにいる化学者らしき奴隷に声をかける。

 

 


おい!そこのアンタ!
そう、そこのお前だ!

 


おいおい、実験材料の分際で俺様を下に呼ぶんじゃねーよ。
実験体にされたくなけりゃ大人しくしてろこのアホ犬!

 

そろそろこんな場所に居続けるのも飽きた。
むしろ早くその実験体とやらにしてくれ・・・。

もう疲れた、と言わんばかりの声でガラドゥは投げかける


ほぅ、志願とは面白いヤツだ。
だが、この天才の俺の脳みそを持ってもお前の使い道は思いつかんなぁ。

 


獣人は人間の何倍もパワーがある。
そこに居る女と俺を使って、重労働に耐えれる人間を造ってみるのはどうだ?

 


!!!!
ちょっと!アナタどういうつもりなの!?

 

 

ベルデアの激昂を無視するかのように奴隷化学者がベルデアを見る

 

 


ん~確かにそれは面白いなぁ・・・。いや、私の脳に相応しい発想だ!
ちょうどこの材料の使い道も無かったし・これは私の案だぞ?
お前の様なアホ犬の言ったことに興味があるわけじゃないからな!
それにきっとヘルガもこき使える奴隷が増えれば喜ぶだろう♪

 


この人でなし!!

 

 

奴隷化学者は鼻歌を歌いながら2人の格子の鍵を開ける。
その瞬間だった。

 

 


悪いな。あれは嘘だ。


へぶ!?

 

ガラドゥは科学者を殴り気絶させると、鍵を奪い自分の居た牢屋に放り込み、
飛び掛ってきたヘルダストを壁に叩きつけ黒い煙へと変えた。
そして、ガラドゥは手をベルデアに差し伸べた。

 

 


・・・・・・。

 

 

ベルデアは何も言わず、手を伸ばそうとはしなかった。

 

 


そうか・・・。
だが、我にも行かねばならない場所がある。
・・・御免。

 

 

そういうとガラドゥは歩き出そうとしたが、その時、ベルデアはガラドゥの服の裾を掴んだ。

 

 


死にたくもない・・・。
分かってしまった、まだ、私は死にたくないんだと・・・。

 


・・・。

 

 

ガラドゥは何も言わずベルデアを抱き上げた。

 

 


・・・・でも・・・これからどうするの。

 


マリコ殿とシルビ殿を見つけなくてはならん。
・・・少し急ぐぞ、しっかり掴まっておれ。

 

 

そう言うとガラドゥはその場から走り去った。

 

ガラドゥが脱走してしばらくしてから、脱獄を聞きつけたヘルダストが彼の周りを取り囲んでいた。
倒すのは容易とは言え、ここまで多いと流石に面倒だ。

 

 


・・!!・・!!!

 

 

ヘルダスト達は顔を左右に激しく傾げながら陣形を組んでいた。

 

 


・・・止むを得ん!
ベルデア、頭を低くしろ!!!

 


え!?

 

 

唐突の怒号に咄嗟に小さくなりガラドゥにしがみつく。
次の瞬間、ガラドゥは背負っていた斧を大きく振り回しヘルダストを一掃する。

 

 


・・・もう大丈夫だ。

 

 

そう言うとガラドゥがかくりと膝を落とす。

 

 


ガラドゥ!?

 


・・問題ない。
この武器を使うと少し体力の消耗が大きいだけだ。

 


今は周りに敵も居ないみたいだし、少し休んでから・・・。

 


そうは行かない。
まだこれから先にやる事が・・・。

 

 

ガラドゥがそう言って顔をあげた時だった。

 

 


あらあら、怖いワンちゃんだこと。
安心して、今見えてる私は魔法で投影してる言わば“幻”。
手出ししないから安心してちょうだい♪
それに・・・私が用があるのはそこの女の子なの。

 

 

ヘルガは楽しそうな目線をベルデアに向ける

 

 


え・・・・・・。

 


この先にそのワンちゃんと一緒に辿りつけたら、いい物をあげるわ。
あなたがず~~っと探してた大切なものよ?

 


私にそんなものはない!
アナタが私の全てを奪ったのよ!・・・そう・・・!

 

 

ベルデアが何か言い出そうとした時だった。
どこからともなく声が聞こえてきた。

 

 


その声は・・・・・ベルデア・・?

 


!!!!

 

 

ベルデアは身体をビクっとさせる。
何故ならその声には聞き覚えがあったから・・・。

 

 


ランヴィ!?
あなたランヴィなのね!?

 


こっちに来ちゃダメだ、ヘルガは僕を・・・

 


はぁ~い感動の面会はここまで♪
続きはこっちに来てから沢山してちょうだい☆

 


一体彼に何をしたの!?

 


うふふ、お・待・ち・し・て・ま・す・わ♪

 

 

そう言うとヘルガの姿はフッと消えてしまった

 

 

続く

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