地下都市編(14)

マリコは同じ場所に放り込まれた。
そこには、もはやマリコを光の勇者などと崇める者などいなかった。
軽蔑と憎悪の目だけがマリコに向けられていた。

 

ただ、なんだかんだでマリコは飛びぬけて強い。
だから、どんなに憎い存在であってもマリコを集団暴行をすることは出来なかった。

 

マリコにとって、自分が光の勇者だったことはどうでもいいことになっていた。
憎悪の目を向けられるのは当然、軽蔑されるのは当然。

 

自分は勇者ではなかった。
何も考えずに自分を信じた者たちを扇動し、その結果、凄惨な死と絶望を与えた。
そんな者のどこが勇者だというのか。

 

そんな中、老人がお茶をマリコに差し出した。
今は休憩時間だった。
マリコは黙ってそれを受け取った。

 

 


マリコ・・・・・・。
おまえさん、勇者と言われてたんだったけな・・・。

 


私は偽者だった・・・。
何度も言われてきたのに、気がつくのが遅すぎた・・・。

 


・・・。
死のうとなんて考えるなよ・・・。

 


!!

 

 

マリコは心の中を見透かされた気持ちになった。

 

 


わしはこの歳だ。
幾度となくこういったのを見て来た・・・。
だがなあ・・・思うんじゃよ・・・・・・。
ここからは出られはずはない、そう思っても死ぬ前には一度は・・・と・・・。

 


また扇動者になれって言ってるのかしら・・・。

 


まさか。

 


じゃあ、何かしら・・・。

 


ただ、お前さんは希望そのものの存在なのだろう、と。
凄惨な最期を迎えようとも、多くの者達に希望を与えたように・・・お前さんは外の世界でも希望の存在じゃったんだろう・・・・・・。

 


・・・。
皆が私を光の勇者だと言った。
勇者であるならば、私は救わねばならない存在・・・。
だけど、私は偽者だった・・・。

 


すべてが偽者だったわけじゃ、あるまいて。

 


 


おまえさんは救いたいと願い続けた。
少なくともその心に偽りはなかったはずじゃ。
それとも、おまえさんは勇者と呼ばれてたから救おうとでも思ってたのか?

 


・・・!

 

 

それは、考えたこともないことだった。
マリコは光の勇者だと崇められてきた。
だから、自らを投げ出してでも戦うのは当然・・・。
戦うのは当然・・しかし・・・。
しかし、勇者だから救いたかったのか、自分の意思で救いたかったのか・・・。
はたして・・・。

 

 


なあ、マリコ。
おまえさんは、救いたかっただけじゃろうて。
ただ純粋に。
その結果が、こんな末路だったとしても。

 

 

 

*************************

 

 

 


じいさん、あいつと何の話をしてたんだよ。

 


なに、単なる世間話じゃよ。

 


ふーん。
まあ、馬鹿な奴だよなー。
ついていった奴らもだけど?

 


死んだ者を悪く言うもんじゃない。

 


まーな。
でもさ、生き残った奴らといい、他の連中もげんきんだよな。
あれだけ、光の勇者様~って頼りきりなってたくせに失敗するとこう。
手のひら返すのうまい連中だよな。

 

 

吐き捨てるように言うカイ。
カイにとってマリコは軽蔑すべき存在だが、それ以上にその周りを軽蔑していた。

 

 


・・・言うな、カイ。
皆、辛いだけなんじゃ。
マリコのこともじゃ・・・。
言っただろう、光属性は崇められる運命、それは悲劇なんじゃと。

 


崇められる運命ねー・・・。
俺、この外出たことねーからなあ。
わかんねえや。

 


・・・。
そうじゃったな・・・。

 

 

カイは物心つく前に奴隷としてここへ落とされた。
そのため、ここへの順応は早かった。
他の者達から外の様子を聞いて外に憧れを持った時期もあったが、こういった出来事を数回目の当たりにしている。
いまや、外に対する憧れも出てみたいという気持ちもない。

 

 


それより、じいさん。
俺にも茶くれよ。
のど渇いちゃってたんだよ。

 


そうか・・・今入れてやるから少し待っておれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それにしても、あいつ。
別人みたいになっちまったなー。
当たり前だけど。

 

 

カイは他人事のようにつぶやいた。
いや、カイにとっては全てが他人事だった。

 

 

続く

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