マリコの怪我が順調なので、ガラドゥにマリコを頼むと言って状況を報告にシルビはいったんガラドゥの側近のサリムと共にデルタ村に戻ることになった。
マリコが一緒に戻るときかなかなかったが、ガラドゥがシルビが見えなくなるまで羽交い絞めにして村に戻ることを許さなかった。
そして、集落の出入り口には腕の確かな者たちをそれぞれを立たせてマリコを絶対に外に出さないよう命じた。
怪我を負ってるため無理やり獣人達の猛者たちを相手に出来るはずのないマリコは村に戻ることを諦めざるを得なかった。
私は、もう、動けるのに。
不満をかくしきれないマリコ。
マリコ殿・・・そなた、シルビ殿のことを考えたことはあるのか?
シルビ殿が、どれほどマリコ殿を心配しているのかを。
・・・。
私はシルビに何かを押し付けたりはしてないわ。
心配をかけるような真似もしてない。
それはそなたが勝手にそう思っているだけだ。
マリコ殿は・・・シルビ殿に甘えすぎではないか?
シルビ殿が自分の全てを許してくれる、と。
でも、そなたの行動全てを許しているわけではない。
どういう意味かしら。
・・・。
そなたの行動は、異常だ。
異常なほど勇者である己の立場に拘っている。
異常とは聞き捨てならないわ。
勇者と呼ばれる、それは私の誇り。
其の誇りが、度を過ぎているというのだ。
そんなことありえないわ。
我はそなたが勇者であることを認めるわけにはいかない。
そなたが勇者なのは戦においてだけだ。
なにそれ。
意味が分からないわ。
シルビ殿の心配は、そこだ・・・。
そのまま、ガラドゥは押し黙った。
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マリコ、あなた変な子よね。
出会いがしら、荷物を抱えながらミデドゥはマリコにそう言った。
マリコは、少しなら、という約束で外を出歩くことを許されるようになっていた。
何故かしら。
だって、ここまで来る必要なかったんじゃないの?
シルビだけで十分だったはずよ。
だって、状況を伝えに来るだけだったんだから。
私が行く、そう村の人たちに約束したの。
だから来た、それだけよ。
それが変だって言っているのよ。
あなたも・・・村の人たちもね。
勇者だかなんだか知らないけど、おとなしく村で療養していればよかったのよ。
腕のいい医者もいるし治癒魔法を使える警備隊員もいるって聞いたわ。
なのに、来た。
意味わかんない。
私は私自身の決めたことをしただけ。
村の人たちを助けると約束した、何があっても。
・・・。
村の人達が何であなたに頼りきりになっちゃったか、何か分かっちゃった。
頼るのは当然よ、戦い方を知らない人達なのだから。
戦える人間が動く、当然だわ。
あなたは戦うしか脳がないの?
頼られたら全て引き受けるのが良いことだと思ってるの?
当然だわ。
異常よ、あなた。
さすがガラドゥの娘ね。
同じことを言う。
だって、異常だもの。
私もちらって、お父様から聞いたわ。
あなたの病状だけだけどね。
・・・。
もう一度言うわ。
あなたがそこまでする意味は、なかった。
意味ならある。
私は私の誇りをかけて自らの行動を決めた。
決めたことは覆さない、それは私にとっての絶対・・・誇りだわ。
マリコは絶対の決意を持って立っている。
其の様子にミデドゥはため息を吐いた。
絶対って、何?
誇りって、何?
いいじゃない、大怪我したんだし。
命がけで村人を守ったんだもの、少しぐらい覆ったって問題ないわ。
誰もあなたを責めないんじゃないの?
ヘッポコ村人達だってね。
大体、その程度のことであなたの誇りが傷つくなんて変な話よ。
守るって決めたって言うけど、ここには戦いに来るわけじゃなかったんでしょ。
魔物が全ていなくなったわけじゃないわ。
・・・。
これじゃあ、シルビも大変ね。
同情しちゃう。
そういい捨てて、ミデドゥはすたすたと荷物を抱えて去っていった。