岩山編(13)

ガラドゥは外に出る間際、シルビに声をかけた。

 

 

ガラドゥ
シルビ殿、少し話を良いか?
マリコ殿、しばらくシルビ殿を借りる。

 

 

一緒に診療室の外に出るガラドゥとシルビ。

 

 

シルビ
何だ、ガラドゥ。

 

ガラドゥ
マリコ殿が、あそこまでの怪我を負ってまでここまで来た原因・・・。
それは、マリコ殿自身にあると思ってな。

 

シルビ
・・・何でそう思う?

 

ガラドゥ
マリコ殿はどこか異常な気がする。
医師殿の話を聞くと、ここにくること自体が出来ないはずだと。
治癒魔法を前もってかけられたとしても、そもそも来る前から動けなかったはずだと。
なのに、なぜかここまで来た。

 

シルビ
・・・すまねぇ。

 

ガラドゥ
何故おぬしが謝る?
誰にも何も出来ない何かがマリコ殿にはある。
まるで・・・何かにとり憑かれるているようにすら感じる。

 

シルビ
・・・。
俺達は元々、魔族討伐部隊にいた・・・。

 

ガラドゥ
それは噂に聞いておったが・・・本当だったのだな。

 

シルビ
あいつは、部隊に入ってすぐに其の戦闘能力を発揮してあっという間に副部隊長に抜擢された。
次は部隊長は確定、時期将軍にとまで言われていたよ・・・。
まだ15なのに。

 

ガラドゥ
・・・。

 

シルビ
颯爽と何をも恐れず勇敢に戦場を駆ける姿に皆は圧倒され、魅了された。
勇者が誕生した・・・誰も彼もがそう思うようになった・・・。
あいつは光を持って生まれた光属性だ・・・しかも、とりわけ強い光属性・・・。
だから皆はマリコを光の勇者と呼んだ。
特別な光を持って生まれた、特別な存在・・・そう誰も彼もがマリコを崇めた。
マリコも、それに応えるかのように、さらに戦場を駆け回っていたよ・・・。

 

ガラドゥ
なるほど・・・。
確かに誇り高い娘御だ、マリコ殿は。
異常すぎるほどに・・・な。

 

シルビ
確かに異常だよ、マリコは。

 

ガラドゥ
・・・。

 

 

シルビはどこか遠くを見るかのように淡々とマリコのことを喋る。

 

 

シルビ
マリコは誰にも痛いとか苦しいとか言わねえ。
どんなことがあろうとだ。

 

ガラドゥ
そうか・・・。

 

シルビ
そう育てられたしな、師匠・・・あいつの父親に。

 

ガラドゥ
そうなのか・・・。

 

シルビ
師匠は上に立つ者としてマリコを育てた。
なんせ強い光属性を持って生まれた。
どっちにしろ周囲からは特別視される。
それもあったんだろうな、厳しく育てたのは。

 

ガラドゥ
・・・。

 

シルビ
泣き言も痛みをあらわにする事も許さなかった。
上に立つ者にそれは許されない、と。
マリコ自身もそう思ってる。
自身の弱さは決して周りには知られてはならないと心に決めている。
崇められれば崇められるほど、それは強くなっていった・・・。

 

ガラドゥ
しかし、おぬしの前では弱さを伝えられる、痛いといえる・・・というわけか。

 

シルビ
まさか。

 

ガラドゥ
マリコ殿を見る限り、そう思えるが・・・。
シルビ殿と我々との態度には明らかな差がある。

 

シルビ
俺が勝手に分かっちまうだけだ。
なんせ、あいつとは赤ん坊の頃からの付き合いだからな。
実際、痛いだろ、と言っても黙るだけだ。
黙るだけで、結局痛いとも辛いとも言わない。
あいつが物心つく前からだ。
強情だよ、まったく。

 

 

悔しそうにこぶしを強く握りしめるシルビ。

 

 

ガラドゥ
痛いだろうと聞くと、黙る・・・。
・・・。
シルビ殿・・・。
それは、そうだと言っている様なものだ、違うか?
理解してくれている者がいる、口には出せなくとも、分かってくれる者がいる・・・。
それはマリコ殿にとってどんなに救いか・・・。
言えないのは単なる癖なのだ、マリコ殿の。
どんなことがあってもマリコ殿より先に死んではならぬぞ、シルビ殿。
そうでなければ・・・マリコ殿はいずれは壊れるだろう。
マリコ殿はまだ幼い。
勇者と崇められるには、あまりにも重たすぎるのだ。

 

シルビ
・・・。
 

 

 

 

 

 

 

続く
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