岩山編(11)

マリコがさっさと岩山を登ろうとしたとき、シルビがそれを止めた。

 

 

シルビ
俺におぶされ。
それじゃあ、もう、まともに動けないだろう。

 

マリコ
動けるわ。

 

シルビ
・・・。
いいからおぶされ。
こんな岩肌を登るような道じゃあ、肩も貸せない。

 

 

実際、岩山にある道は岩肌を削って作った道で一人分の幅しかないし傾斜も酷い。

 

 

マリコ
平気よ。

 

シルビ
いいからおぶされ、足手まとい思われたくなければな。

 

 

わざと冷たく言い放つシルビ。
そういう言い方ではないとマリコを納得させらないのは分かっている為である。
優しく言ったら、逆効果になる、それをシルビはよく理解している。

 

 

マリコ

仕方がないわね・・・。
でも、獣人族の集落に近づいてきたら下りて自分で登るわ。
それは譲れない。

 

シルビ
・・・。

 

 

*************************

 

 

獣人族の集落の近くまでたどり着いたマリコとシルビ。
マリコは宣言どおり、途中から自分で岩山を登っていった。
マリコは獣人達に怪我をどうこう言われることを嫌った為だった。
そんなマリコに、シルビは複雑な感情を抱いた。

 

 

マリコ
あそこが獣人族が住んでいるっていう集落ね。
道もだいぶ広がってきたわ。

 

シルビ
あとちょっとっていったところかな。

 

 

さらに進もうとしたマリコとシルビ。
そこへ、ちょうど獣人族の少女と出くわした。

 

 

ガラドゥの娘
!!??
人間!!??
あなた達、ここへ入ってこれたの!?
何で!
どうして!
私達、どこからもこの岩山からは出られなかったのに!
取引ができなくなったのに誰も来ないし、きっと普通の人間も外からは入れないんだと思ってたのよ???

 

マリコ
もう外に出れるわよ。
岩山に結界を作ってた奴、私達が倒したから。

 

ガラドゥの娘
何ですって!!!!
あ!
皆に報告しなくちゃ!
ちょっと待ってて!!

 

 

あわただしく集落に入っていく少女。
そうこうしているうちに、獣人族たちが押し寄せてきた。
その中には族長のガラドゥも含まれていた。

 

 

ガラドゥ
私はここの族長のガラドゥと申す。
先ほどのやかましい娘は我が子、ミデドゥ。
経過は知らぬが・・・まずは岩山の結界を解いて頂いた事に礼を申し上げる。

 

 

次々にマリコとシルビを囲んで礼をする獣人達。

 

 

ガラドゥ

・・・お前達、礼をするにも態度をわきまえろ。
囲むなど、迷惑千万な行為だ。

 

 

怒鳴りはしないものの、威厳のある言葉に黙る獣人達。

 

 

ガラドゥ
この非礼は後でわびるとして・・・。
その娘御、大怪我をしているではないか。
ミデドゥ、すぐに医師に伝えよ。
診療所まで運んでいく。

 

ガラドゥの娘
!?
は、はい、お父様!

 

マリコ
大げさです、族長さん。
確かに怪我を負ってますが、大怪我などではないですよ。

 

シルビ
・・・。

 

ガラドゥ
大怪我だ。
他の誰をごまかせても、我が眼はごまかせぬ。
サリム、運べ。

 

ガラドゥの側近
ははぁっ!!

 

 

マリコが文句言う暇もなく抱えあげるサリム。
マリコはそのまま診療所まで運ばれていった。

 

 

*********************

 

 

診療所にて、マリコの治療が終わるのを待つシルビと族長のガラドゥ。
他の獣人達は帰るようガラドゥに命じられ渋々それぞれの家に戻っていった。

 

 

ガラドゥ
さて、シルビ殿といったか・・・。
あの怪我、知らなかったとは言わせぬ。
どうして連れてきた。

 

シルビ
・・・。
俺がふがいないせいだよ・・・。
言い訳はしない。

 

 

しばらくの間シルビを見続けるガラドゥ。
そうしているうちに、理由というよりも何かしらの原因があるのではと思った。

 

 

ガラドゥ
・・・そうか、何か訳がありそうだ。
強く言ってすまなかった。

 

シルビ
・・・。
訳って程のことじゃあ、ない。
謝る必要もない。
全部俺のせいだ。

 

ガラドゥ
何も知らぬから何も言えぬな・・・。
訳は・・・言うも言わないも自由だ。
無理強いはせぬ。

 

シルビ
・・・。

 

ガラドゥ
とにかく、治療が終わるのを待つとしよう。

 

 

二時間ほど経つと、どこかのほほんとした雰囲気の医師が診療室から出てきた。

 

 

シルビ
マリコは!?

 

獣人の医師
大丈夫だよ。
今は麻酔で眠っているけどね。
火傷だねぇ、あれは。
それもとんでもなく酷い。
かなり広い範囲だったから結構治療に時間かかっちゃったよ。
相当酷い炎にやられた感じだねえ。
びっくり。
まあ、一族秘伝の薬も塗ったし、きちんと療養すれば完治するよ。
後遺症も残らない。

 

シルビ
・・・よかった。

 

獣人の医師
治癒魔法をかけられたあとがあったね、そういえば。
アレがよく効いたんだね~。
それのおかげでギリギリセーフってところだね。
でも痕はちょっと残っちゃうかな。
女の子だから可愛そうだけど、こればっかりはね。

 

 

のんびりした口調で言う医師。
シルビは完治すると聞いてほっと胸をなでおろしたが、痕が残ると聞いて悔しさがにじみ出た。

 

 

シルビ
・・・そうですか。
先生、ありがとうございます。

 

獣人の医師
いやいや。
そうそう、あの子、今は麻酔で眠っているよ。
そのうち起きるから、うーんとシルビ君・・・だっけ?・・・まあいいや、中で待ってるといいよ。
起きたとき誰かいたほうが安心できるだろうからね。

 

シルビ
・・・はい、そうですね。

 

獣人の医師
そう、気落ちしない。
痕は残るけど完治はするんだ。
後遺症が残らないだけめっけもんだ。

 

シルビ
・・・。

 

獣人の医師
それにしても、あの子。
よくここまで来れたねぇ~。
普通なら歩けないよ、あの怪我じゃ。
何で歩けたのかなぁ。
というか、なんでここまで登れたのかなあ???

 

 

不思議そうに考え込む医師。
その様子に、シルビの想像以上にマリコの怪我が深刻だったことは明らかだった。
シルビがおぶって行ったとはいえ、それは途中までだ。
悔しさを胸に、シルビは診療室に入りマリコが起きるのを待つことにした。

 

 

ガラドゥはシルビの背中を見つつも何も言わなかった。
何も知らない以上は余計な言葉は投げない、それがガラドゥの主義だった。
 

 

続く
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